


念引きは、念には念を入れ施される大切な仕上げです
鞄や革小物、革ベルトなどにしばしば見られる「念」は、貼り合わせて縫合された革同士の密着性を高めるため、縫製とコバの間に熱ゴテを当て、そのコバに平行して施す細い溝のこと。
念引きとは、その念を入れる作業を指す。これにより、見た目の高級感を高めることもできるが、正確で慎重な作業が求められるため、職人には熟練の技術が必要になる。もっとも、すべての念が革の密着性UPに貢献しているとは限らず、じつは単なる装飾として浅い念が引かれた製品も少なくない。

2枚の革を薄く、しなやかに貼り合わせるベタ貼りや、染料で施される切り目本磨きが、「ファーロ」の十八番。が、独自に調整した熱ゴテを使った念の仕上がりも素晴らしく、ベタ貼りと相まって、長年にわたる酷使でも決して革の剝がれを許さない。しかも、本磨きのコバや美しく堅牢な縫製とも共鳴しつつ、製品をより品よく見せることにも貢献。日本の職人の圧倒的技術力を見せつけるファーロの革小物では、ただひと筋の念にも職人の心意気が込められているのだ。
表版のみならず、内造りをなす各パーツのあらゆる縁に念が引かれる。刃先が独自に調整された熱ゴテを駆使し施されるこのディテールに、ファーロの真骨頂が見てとれるハズだ。

表版が水染めコードバンで、内造りがカーフの極上薄作り財布。W10.5×H9.5cm。
※本記事に掲載されている商品の仕様などの情報は、原則として2012年Begin9月号の特集に掲載された当時の情報となります。現在の仕様や情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
