特集・連載
アルコディオ(ARCODIO)が正統ハンドステッチシャツを1枚5500円にした理由
最小投資のハッピーライフ実例 世の中今や、右も左も“安くていいモノ”ばっかり。モノ好きにとっては嬉しい時代になったもんですが、反面、欲しいモノがありすぎちゃってつい無駄買い→全然使ってない…(涙) な~んて思い当たる節、誰しもあるでしょ? そんな時代に“安くていいモノ”暮らしを実例を交えてあらためて考え直します。 この記事は特集・連載「最小投資のハッピーライフ実例」#09です。
高級イタリアンシャツの本格仕様を取り入れたシャツが、たったの5500円!? ビジネスマンはもちろん、エグゼクティブの間でも話題沸騰の“神”プライスシャツのディテールには、文字通り“神”が宿っていました。
正統ハンドステッチシャツを“使い捨て”しても惜しくない価格で作ったんです。
(談・アルコディオ 代表取締役社長 神山佳夏)
高くても安くても、真っ白なシャツはすぐに黄ばんでしまうもの。古今東西変わらない宿命です。そこで私は、本格仕様のイタリアンシャツをいかにリーズナブルに提供できるかに徹底してこだわる、白シャツの専門ブランド、アルコディオを設立したんです。
私たちのシャツの特徴はディテールにあります。まずは袖の後付け。一般的なシャツは袖口から脇、身頃の裾までを一気に縫製するんですが、後付けの場合は身頃と袖を別々に縫製して筒状にしてから、それぞれを縫い合わせます。
これはミラノシャツの伝統的な手法で、立体的に仕上がることでフィット感が高まり、腕を動かした際に生地が捩じれにくくなるんです。

体によく馴染む手縫いのアームホール
アームホールは、イタリアの高級シャツに倣ってハンドステッチで縫製されています。これは可動域の大きな腕回りをミシンでかっちり縫い合わせると、生地が固定されてしまうから。アルコディオのシャツは職人が適度なピッチで縫い合わせているから腕回りが動かしやすく、よく馴染むんです。
シャツの命である生地は140番手双糸のブロード。品質の高い新疆綿のなかでも繊維長の長い140番手双糸です。滑らかな風合いは数万円の高級シャツにも引けをとりません。
ボタンはもちろん白蝶貝。厚さ2mmが一般的ですが、アルコディオでは原価約2倍の3mm厚を使っています。私自身が“シャツのボタンは男の装飾品”と考えているため、譲れませんでした。


シャツの顔である衿にもこだわりました。後部はマシンでプレスしますが、前部の衿のロールはハンドアイロンで仕上げています。
手間はかかるものの、こうすることで、衿が優美なカーブを描くんです。ちなみに、デザインやディテールはミラノの著名ファッションディレクター、ダニエレ・ザナルディさんに監修してもらっています。
そして何より、アルコディオの最大の武器は価格設定。秘密は生産方法にあります。縫製は日本の有力シャツ工場が経営する、フィリピンの工場。試行錯誤しながら、日本の技術を現地スタッフに細かく教えたことにより、“一流”といえるレベルの縫製技術、さらにアームホールのハンドステッチまで可能になったんです。
さらに、仕上げのみ日本の工場で行うことで高い品質を担保しています。さらに、少しでも無駄なコストを削減すべく、販売はECサイトのみ。店舗を持たず、工場から直接お届けすることで経費を圧縮しています。
一枚5500円にした理由は、惜しみなく着られる価格帯にしたかったから。ビジネスのカジュアル化が進んだ今、オフィスに“置きシャツ”して必要なときに着替え、何度か着て汚れたら捨てる……、というスタイルも、特にエグゼクティブの間で定着しつつあると聞きます。
極論、アルコディオの白シャツは使い捨てでいい。高価なものを汚れてまで着るより、常にパリッとしたシャツを着ていたほうがカッコいいと思いませんか?
ARCODIO[アルコディオ]
セミワイドシャツ
シルエットは日本人の体型に合わせた、程よく細身のシルエット。代表モデルは「フィデリオ」と名付けられた、ビジネスシーンで使いやすいセミワイドカラー。販売は自社ECサイトのみ。5500円(アルコディオ)。別途1500円で袖丈の修正にも対応してくれるのも嬉しいところ。
アルコディオ 代表取締役社長
神山佳夏
神奈川県出身。バーニーズ ニューヨークやシャツ専門ブランドで実績を積んだ後、独立。名だたる有名ブランドやECサイトの立ち上げを担当する。2018年秋にアルコディオを設立。
※表示価格は税抜き
[ビギン2019年7月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。