シャンブレーシャツとは? そのルーツを知るための基礎知識Q&A
シャンブレーシャツを知るとはワークシャツを知ることである
今ではキレイめコーデでも重宝されるシャンブレーシャツですが、ルーツはワークど直球。ワークシャツを知ることで初めて、シャンブレーシャツの素顔が見えてくるんです!
Q1.シャンブレーシャツ=ワークシャツ?
A. シャンブレーの誕生は16世紀、フランスの「カンブレー」という町で聖職者や労働者が羽織りだしたことが始まりとされる。当時はリネン製で、肉体労働時の激しい動きにも耐えられる、丈夫で破れにくく涼しい生地だと重宝がられたのだ。そのタフさが買われ、シャンブレーのシャツは19世紀にはデニムやダンガリー、ツイルのそれと同じく、アメリカンワークウェアの代表的存在になっていった。
Q2.ワークシャツにブルーが多いのはなぜ?
A. 炭坑や鉄道、建築現場などで作業に従事する肉体労働には、土やホコリ、オイルといった汚れがつきまとう。当然、洋服の汚れなど気にしていたら仕事にならないため、あらかじめ汚れが目立ちにくい色として、インディゴ染めの生地が多く用いられたというのが通説。同じく作業着を発祥とするジーンズがブルーなのも同じ理由だ。
ベースの生地に関係なく、インディゴ染めのブルーが最もポピュラー。またデザイン性を取り入れながらも汚れが目立たないペンシルストライプ、鉄道作業員や林業従事者が好んだヒッコリーも重宝された。その後、硫化染めによる黒や茶、赤などカラータイプも登場。
Q3.ワークシャツでよく見るディテールは?
A. 機能性や生産性を重視して仕立てられるワークシャツには、ほかにはない特有の仕様が。そこにも、ひとつひとつちゃんと意味がある。
イッテコイ
袖口の切れ込みを、より効率的かつ丈夫に生産するための仕様。上下の短冊状の帯が一枚布で、折り返して縫製される。
ベンチレーション
脇や背中のヨークに施される、通気口の役割を果たす菊穴のこと。蒸れを軽減し、快適性を高めるためのディテールだ。
レイルマンポケット
鉄道作業員が懐中時計を収めるために考案された。横向きに開口部が設けられており、前屈みになっても時計が落ちにくい。
空環
サイドの裾に見られる、縫い糸が未処理になった仕上げで、大量生産の合理主義が生んだ仕様。読み方は「カラカン」。
Q4.ワークシャツはいつからファッションになったの?
A. 肉体労働者の仕事着でしかなかったワークシャツが、ファッションアイテムとして取り入れられることになったターニングポイントは、1960年代の後半。ベトナム戦争が泥沼化するなか、愛と平和を訴える若者たちの間で、古着のワークシャツに花やピースマークなどの刺繍を施したリメイクが流行した。これが、いわゆる「フラワームーブメント」とともに世界へと伝播したというワケである。
愛と平和のメッセージとともにファッションアイテムとして伝播
1960年代後半、人種差別や戦争のない世界を夢見てサンフランシスコを中心に起こったフラワームーブメント。’69年に開催された平和と音楽の祭典「ウッドストック」にも、各々の装飾を施したワークシャツ姿の若者が集結した。
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Q4.ワークシャツをフレンチに落とし込んだのは?
A. セルジュとかの英国女優、ジェーン・バーキンとの間に生まれたシャルロット。父と娘が仲良くシャンブレーシャツを着用した写真は、フレンチファッションの教料書のひとつ。褪せたジーンズにタックインした、カの抜けたスタイリングは玄人筋の間でも信者が多い。
シャルロット・ゲンスブール(左)/セルジュ・ゲンスブール(右)
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[ビギン2025年5月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。