2大定番「ビッグヤンク」と「オーベルジュ」のシャンブレーシャツを徹底解説
ワーク&ミリタリーで学ぶシャンブレーシャツ2大定番
単にインディゴシャツ=シャンブレーシャツにあらず。その歴史は遡ること100年前! さわやかな青色とは裏腹に骨太なシャツを、ワークとミリタリーの両面から解説します。
“ガチャポケ”ワークシャツの祖「ビッグヤンク」
BIG YANK[ビッグヤンク]
1935 オリジナルシャンブレー
「ガチャポケ」といわれる両胸に非対称な形のポケットが配置された、1930年代を象徴するワークシャツ。作業中でもストレスフリーなボリュームのあるラインと、前身頃が長いパターンで、タックイン時に裾が出にくいように配慮されている。ほかにもカフスやヨークなど、語れる骨太なディテール多数! 3万800円(アール 柳橋)
背中への負担を逃がすストレインプルーフヨーク
タバコが湿気にくい二重構造のシガーポケット
着るほどインディゴが色褪せるのが最大の魅力
機械への巻き込まれを防ぐストームカフス
1920年代以前にはドレスとワークの境界線はなかった?
黎明期のワークシャツは、英国のテーラード衣料の流れを色濃く残しているのが特徴。ストラ イプやドットがプリントされた生地、ラウンドカラーやスタンドカラーのタイプも多かった。
BIG YANK[ビッグヤンク]
1919年にアメリカ・イリノイ州のシカゴに拠点を置くリライアンス社が立ち上げたワークウェアブランド。ガチャポケや山ポケなど、ユニークなディテールを持つワークウェアとして有名である。一度ブランドは消滅したが、2011年に寺本欣児氏が復刻。忠実に再現させたワークシャツを中心に、新たな提案を試みる。
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ビッグヤンクで学ぶ両ポケシャンブレーの変遷
下一枚目の写真は1929年に申請された、ビッグヤンクによるシガレットポケットの図案。当初はボタンのフラップ留めで、フラップを開けずに脇からボックス内のタバコを取り出せる設計だった。左右の大きさの違うガチャポケはこの頃からで、やがてフラップなしの山ポケへと発展。一回り大きな右ポケにはペン差しが備わる。
【1929年】ガチャポケ
【1942年】山ポケ
【1954年】パッチポケット
米海軍シャンブレーの現代版「オーベルジュ」
AUBERGE[オーベルジュ]
ガズリー
ボブ・ディランの師である歌手ウッディ・ガズリーが、戦争帰還後に着ていた米海軍シャンブレーシャツがモチーフの一着。西インド諸島産の最高級原綿を100%使用したシャンブレー生地を採用し、膨らみとコシのある仕上がりに。さらに、糸の染色には硫化染料を使用し、自然なエイジングにも期待大。7万3700円(オーベルジュ)
襟先は40年代らしいロングポイント
大戦期に見られるフラップなしのポケット
なめらかなカリビアンシーアイランドコットン
糸切れに強い猫目ボタンを採用
1941年には米海軍で着用が認められた!
階級の低い兵士たちが着用していたシャツのなかで代表的なのが、米海軍のデッキクルーに採用されていたシャンブレーシャツ。ミルスペックの品も支給されたが、統制はとれておらず民生品を着る兵士も多かった。ゆえに無数のデザインが存在し軍も黙認していた。
AUBERGE[オーベルジュ]
スロウガンのデザイナー、小林 学氏が2018年に設立。ブランド名はフランス語で料理に長けた宿泊施設を指す言葉に由来する。ヴィンテージに造詣が深く、往年の名作を国内有数の工場とともに、最高級の素材と技術で再現。服好きこそ舌鼓を打つ、まさに三ツ星フレンチレストラン的ファッションブランドといえよう。
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シャンブレー・ダンガリー・デニムの違いをおさえる
混同されがちなワークシャツの三大素材。デニムはタテに色糸、ヨコに白糸を使った綾織りなのに対し、シャンブレーはタテとヨコの関係はそのままに平織りにしたもの。
デニム
シャンブレー
一方、デニムより細番手の糸を用いて、タテに白糸、ヨコに色糸を打ち込んだ綾織り生地がダンガリーとなる。ただ、生地メーカーでは、シャンブレー生地の定義が番手から決まっていることも多いが、広くファッション業界では厳密に定まっていないのが実情。
ダンガリー
※表示価格は税込み
[ビギン2025年5月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。