好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]
南 貴之さんが手に入れた出自不明のスリッパラック。色々な想像を促すアノニマスな一品
まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。
ポストモダンというよりは……
今回は、単純に一番最近手に入れたものを。前回もオークションの話に触れたけど、僕が普段から家具をよく見ているせいで、オススメにそういうものがたくさん出てくるんです。このスリッパラックもそのひとつ。
“ポストモダン風”の謳い文句が掲げてあって、ちょっとカワイイなと思って何の気なしにポチりました。一応’80年代とは書いてあったけど真偽は不明だし、デザイナーはもちろんメーカーも分かりません。そして届いた感想としては、写真の方が良かったです(笑)。
まず、それほどポストモダンっぽくない。この本体の黒がもっと深かったり、艶のある質感だったらもう少しそれっぽかったかな。
横についてるフックは、この低さで何を掛けるべきかは置いておいても、赤い玉がジョイスティックにしか見えない。ゲーセンの筐体で見るヤツ。もしかしたら本当にパーツも流用だったりするのかな?
全体の形はよく見るとオバQみたい。とまぁ、ポストモダンというよりは昭和感たっぷりですが、とりあえず使ってみようと思います。
そもそも土足文化の海外ではスリッパラックってあまり見ないし、名作デザインというのも聞いたことがないですよね。僕も探してすらなかったけど、こういう力の抜けたものが突然出てくるのも古物ならでは。今ウチの玄関に散らばってるルーマーのスリッパは、ひとまずこれにまとめます。今回ばかりは写真、実物よりオシャレに撮ってもらいたいなぁ(笑)。
落胆も一期一会の道すがら
BRAND:―
ITEM:SLIPPER RACK
AGE:UNKNOWN
色々な想像を促してくるアノニマスな一品
おそらくスチール製のフレームに4段8箇所のフックを設けたスリッパ用ラック。流線がメインのフォルムや赤の利かせ方など、デザイン的なアプローチが目立つものの、銘や刻印などの類は一切なく、出自は不明。
DETAIL
最大の視覚的アクセントとして配されたであろう両サイドのフック部分には、鍵や折り畳み傘などが掛けられる。サイズ・質感・色合いと、すべてにおいて既視感のあるパーツ。

好事家
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、ディレクション業と型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。3月29日にはグラフペーパーとジャックパーセルのコラボレーションによるスニーカーが発売予定。
※表示価格は税込み
[ビギン2025年5月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。