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ICEを纏う服/【COVEROSS】と語るミライ服vol.5

OpenAIがChatGPTを公開して以降、急に身近な存在となったAI。ナノテクノロジー、コールドフュージョン、タイムトラベル……。先端技術が今、実際のところどこまで進んでいるのか、研究者でもない私たちが知る機会はなかなかない。
一方、私たちが毎日着ている「服」も、最近ずいぶん進化しているような気もするが、相変わらず夏は暑く、冬も外へ出たくない。洗濯も面倒だ。しかし、もう少しすると35℃の真夏でも快適にゴルフができて、氷点下でも外出がしたくなる、しかも洗濯不要! そんな服が当たり前になるかもしれない。
そんな“新しい当たり前”を作らんとするブランドが、機能服のテクノロジーを日々前に進め、ファッションだけでなく産業界や行政からも話題を集めている「COVEROSS®(カバロス)」。我々の「衣」がこの先どこに向かって、今はどこまで来ているのか? Beginは密着取材を通してカバロスに聞いてみることにした。

その価値を倍増し、世界を目指す。
COVEROSS 『W』誕生

「カバロス」への密着連載を通してミライ服の姿に迫ってきた本連載だが、テクノロジーによって社会課題を解決するブランドの姿勢に感銘を受けたビギンは、取材と並行してコラボレーベルの立ち上げ準備を進めていた。ビギンとカバロスが満を持してローンチする新レーベルの名は、「COVEROSS W(カバロス ダブル)」。ネーミングには、コラボレーションによってカバロスの価値を倍増させるとともにWorld=世界へと進出せんとする思いが込められている。
連載第5回となる本記事では、カバロス ダブルの第一弾製品である「ICE PACK T(アイスパックT)」について掘り下げたい。

密着取材するのは……

hap 代表取締役社長 鈴木 素さん

繊維商社に7年間勤めた後、2006年に「hap(ハップ)」を設立。アパレル製品のOEM等を手掛けながら、世界初の快適多機能素材「COVEROSS®(カバロス)」シリーズを開発する。2023年1月には、さまざまな機能性をカスタマイズしながら付与・除去できる後加工技術を駆使した「カバロスのサーキュラーファッション」が第11回技術経営・イノベーション大賞【内閣総理大臣賞】を受賞。座右の銘に「一日一生」。

ミライ服 共犯者No.6

Begin グローバル戦略ラボ 本田純一

2007年に世界文化社へ入社。パズル誌の編集を経てビギン編集部へ移り、現在は雑誌メディアの枠にとらわれず世界へ向けた発信を行うグローバル戦略ラボのリーダーを務める。ハップ代表の鈴木さんとは昨年6月に出会い、意気投合。密着連載を進めながら、コラボレーベルの設立に奔走する。座右の銘に「生きるはつなぐ」。

“最冷感”を目指して。
第一弾は「ICE PACK Tee(アイスパックT)」

気象庁が、夏の暑さについて「命の危険がある暑さ。一つの災害として認識している」と表したのは2018年。イヤというほど認識しているとおり猛暑はその後も続き、2024年は1946年の統計開始以降、6〜8月の平均気温が西日本と沖縄・奄美では1位、東日本では2023年と同じく1位タイの高温を記録した。
そんな猛暑を前にしては、もはや従来どおりのフツウの服で快適に過ごすのは難しい。そこでカバロスが開発したのが、かつてない持続冷感性をもたらす「カバロス ウルトラフリーザーTシャツ」。カバロス ダブルの「アイスパックT」は、連載第1回でも詳報したこれをベースにしたもので、衣類用に開発した特殊な保冷剤“ICE PACK for WEAR(アイスパック フォー ウェア)”によって冷感をブーストする機能をプラスした。

衣類用に開発された保冷剤「ICE PACK for WEAR(アイスパック フォー ウェア)」。冷凍庫に入れておけば、1時間ほどで凍結する。アイスパックT 1枚につき2個付属。

開発に携わったビギン本田自身も、「カバロス ウルトラフリーザーTシャツ」を愛用し、その心地よい冷感に惚れ込んだ一人。

「接触冷感を謳う商品は世の中にたくさんありますが、カバロス ウルトラフリーザーTシャツは他の商品とは一線を画すと実感しています。冷感が持続するのもそうですし、そもそも冷たさがトップクラス。さらにコットン見えするというファッション性を帯びている点が、スポーツブランドのTシャツと違う。じつは、その魅力に触れて“洋服のミライが見える”と感じたことが、密着連載をお願いしたきっかけでもあるんです」。

連載第1回のおさらいになるが、カバロス ウルトラフリーザーTシャツ(2024年モデル)は、セラミックを封入した異形断面の中空ナイロン糸の使用や、通気性を高めるための編み立て、そして遮熱や吸水拡散などの快適多機能性を同時に付与する「カバロス後加工」の三位一体によって、接触冷感性に加えて件の持続冷感性を付与したTシャツだ。
「アイスパックT」のベースは、接触冷感性をさらに高めつつオーガニックコットンを用いたその最新版。そのまま着ても“想像を叩き割る涼しさ”を体感していただくことができるだろう。

加えて「アイスパックT」では、背面首下に潜ませたポケットへ冷凍した「アイスパック フォー ウェア」を入れることで、強力に涼しさをブーストできる。ちなみにこの“涼しさブースト”を備えたアイスパックTには、ヒントとなった服がある。取材時にもハップの鈴木社長が着用していた、2025年販売開始の次世代型ファン付きウェア「カバロス ウルトラフリーザーコア」のプロトタイプである。従来のファン付きウェアは衣服内を換気して熱を逃がす仕組みで、外気温が高い場合(33℃以上)は効果が出にくいことがネックだった。カバロス ウルトラフリーザーコアは取り込んだ空気を、250gの大容量「特殊断熱保冷剤」に通すことで冷風に変換。フード付きジップアップベストの内側がクーラーを付けたように快適になる。

「気温が35℃ともなると、風を当てるだけでは快適に過ごすことはできません。風自体が冷えていなければ意味がない。だからこの服は、宇宙開発にも使われ、サウナスーツの素材でもあるアルミ蒸着生地を断熱材として用い、体を覆ったうえで、ファンから取り込んだ空気をアイスパックに当てることで瞬時に冷やし、それを循環させているんです」と鈴木社長。

「ICE PACK×空調服」のプロトタイプを着用する鈴木さん。

「フードを被れば、冷えた空気を背中や首、顔にまで届けることができます。呼吸する空気も冷やすことができるため、深部体温を効率的に冷やせるのです。いわば着用するエアコン。工事現場で働く方や農家の方の熱中症対策、夏の災害時の需要が見込まれています」。
ゆくゆくはセンサーを搭載しスマホと連携させて温度や風力を自動調整するなどの機能も盛り込むのというから、まさしくミライのスマートウェアである。

少々話が長くなったが、つまりはアイスパックの活用によるその冷たさを「タウンウェアとして着用しながら、より気軽に楽しむことはできないか?」という発想から生まれたのが、背面首下にアイスパック用ポケットを配した件のTシャツというわけなのだ。
「デイリーに着用していただくべく、デザインやディテールの随所にこだわりました」とビギン本田が続ける。

背面首下にアイスパックを入れるためのヒミツのポケットを配置。断熱材を用いることで、程よい冷たさになるよう配慮している。

「アイスパックを入れた際にポケットが浮かないよう、背面上部にはヨークを設けてメッシュ生地を当てました。シルエットはいまどきのリラックスしたそれに。オモテがコットンなので、機能的でありながらナチュラル見えするのもポイントです。裾のドローコードには、ニュアンス付けのファッション的な意味合いとともに、絞ることで冷気を閉じ込められるのではないかと考えました。夏場の通勤通学やガーデニング、ゴルフの打ちっぱなし練習など、日常のさまざまなシーンにご活用いただきたいですね」

アイスパックが浮かないように、背面上部にヨークを設けたデザイン。メッシュとの二重構造により通気性を確保しつつ、汗をかきやすい背面の吸水拡散性を高めている。ちなみに脇には通気用の鳩目穴も。
裾のドローコードを絞ってシルエットのアレンジが可能。冷気を閉じ込めたいという思いも込めている。

一人でも多くの方にぜひこの冷たさを体感していただき、災害級の夏を快適に過ごしていただきたいというのが心からの願いである。

「冷感」のその先へ。
涼しさを明確化する

カバロスの真価である機能性を謳うには、エビデンスが欠かせない。そこでカバロスは、大学などの研究機関や民間の検査機関にてさまざまな試験を行い、製品開発を行っている。件のアイスパックTについても、第三者試験機関「ユニチカガーメンテック」でのサーモグラフィ試験を通じて接触前後や着用前後の温度変化の測定を行った。ちなみに、JIS規格の「接触冷感試験」が行われる環境下の気温20℃、湿度65%でユニチカガーメンテックのアドバイスの元、実施された独自の接触試験(掌で3秒間ずつ、異なる3箇所の生地に計9秒間触れた前後の掌の皮膚表面温度を測定する試験。アイスパック不使用条件)では、1.3℃の温度低下が確認されている。

一方で、「建物の内外、直射日光が当たる場所とそうでない場所、風の有無によっても快適と感じる要素は変わってきますから、JIS規格だけで性能を評価するのは難しい。だから我々は、真夏に着た際の状況も鑑みて、30℃というより高温下での実験も行うようにしています。法律の問題もあり、マーケティングでは謳いづらいんですけどね」と鈴木社長。既存のJIS規格に準拠するのは当然として、よりリアルな状況下で快適に着られるかどうか?や、感覚としてはどう感じるか?も大切にしているというわけだ。

今回、事前に被験者が行った本試験とは別の非公式の実験となるが、アイスパックTの冷感の何たるかをお伝えするべく、連載を担当するライター自ら20℃環境下での試験を体験してみた。関係者であるライターの意見はあくまで主観であることは最初に述べておきたい。

実験を体験するライター・秦

体験した実験は3つ。その1は、掌で3秒間ずつ、生地の異なる3箇所に計9秒間触れた前後の掌の皮膚表面温度を測定する試験。その2は、敷いたTシャツへ後ろ向きに倒れ込み5秒間接触し、触れた上半身後面の皮膚表面温度を測定する試験。その3は、着用前と着用5分後の上半身後面の皮膚表面温度を測定する試験である。これらをアイスパックT、一般的なコットン100%のTシャツ、冷凍庫でキンキンに冷やしたアイスパックを入れたアイスパックTの3種類で試していく。

結論をいうと、アイスパックTへの接触試験ではどの試験でも実測値以上にひんやり感を強く感じた(部屋が20℃環境だったこともあり、しまいには寒さを感じてしまうほど!)。とりわけキンキンのアイスパック入りの5分間着用試験は、2月に体感するにはしんどかった。しかし真夏の環境下での着用感も体験するために30℃の部屋へ移ると、これがすこぶるキモチいいのだ。暑いなかで感じるひんやりって最高!

実際の実験結果。生地に触れる前(画像左)と触れた後(画像右)では、表面温度が下がっていることが確認できる。

小学生の頃、ツンドラモードと称して真夏にエアコンをガンガンに掛け、極寒のなか毛布にくるまると温かくてキモチよかった覚えがあるのだが、あれの逆パターンである。加えてアイスパックTは、ツンドラモードと違ってSDGsにもよい。

繰り返しになるが、ぜひ皆さんにもこの冷たさを体感していただきたい。

【COVEROSS W ICE PACK Tee】

カバロスの定番「カバロス ウルトラフリーザーTシャツ」をベースに、衣類用に開発した特殊な保冷剤「ICE PACK for WEAR」×2&専用ポケットをプラス。最高にキモチいい涼しさブーストを可能にした、カバロス ダブルの第一弾アイテムだ。各1万780円。Begin Marketにて、絶賛予約受付中。3月26日19:00一般販売開始予定。

なお、予約期間中の特典として送料無料キャンペーンも実施中。早めの申し込みが吉だ。
商品の詳細はこちらから。

次回告知

次回は、カバロス ダブルの第2弾アイテムである、夏にもはけるにこだわった令和の「育てるサステナデニム」をフィーチャー。その全容を明かしつつ、制作秘話をお届けする。

問い合わせ先/カバロス
https://coveross.jp/
info@hap-h.jp

※表示価格は税込みです


写真/岡田大聖 伏見早織 文/秦 大輔

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