ミュージアム名品を通してアートを楽しむ[博ブツ観]
鉄道ファンも納得のクオリティ。横浜都市発展記念館で見つけた「革ノ切符」のエモさ
ミュージアムグッズは、単なるお土産品にあらず。旅好きのグッズ愛好家・大澤夏美さんによる、掘れば掘るほど面白いグッズとアートのお土産バナシをどうぞ。

ミュージアムグッズ愛好家
大澤夏美さん
博物館経営論を軸に、旅をしながら全国の博物館を訪ねてグッズも研究。著書に『ミュージアムと生きていく』(文学通信)など。最近は講演会で各地を巡りグッズを探訪中!
切符に込められた、旅の物語と思い出
筆者は鄙の北海道に住んでいるので、公共交通機関では「切符」が今も広く使われています。道内を電車で移動する際は交通ICカードが使える地域かどうかドキドキしつつも、切符を買う時のワクワク感はやはり特別なものです。
北海道帯広市幸福町にある旧国鉄幸福駅跡では、駅舎内を埋め尽くすようにピンク色の切符が貼られています。旧国鉄広尾線の廃線と共に廃止となった駅ですが、縁起の良い駅名が記された幸福の切符を貼るべく、たくさんの観光客が訪れます。訪れた人々の願いが籠った切符の「モノ」としての愛おしさは、多くの人に共通する感情なのかもしれません。
横浜都市発展記念館ではその名の通り、横浜という街が都市として発展していく様を、膨大な資料をもとに、都市計画、交通網などの観点からつぶさに紹介。それに伴う市民の暮らしの変化や、横浜を象徴する文化や娯楽についても知ることができます。見慣れた町が今の姿になるまでの歩みを学べるので、街歩きが趣味の方にはとくにおすすめしたいミュージアムです。
そんな横浜都市発展記念館のミュージアムグッズ「革ノ切符」は、革製の切符をキーホルダーとして持ち歩けるアイテム。鉄道開業150周年を記念した特別展「横浜鉄道クロニクル」に合わせて製作されたこちらは、開業当時の切符のデザインが革に印刷されています。
コラボ相手の「クンペル」は、切符などの特殊印刷を手掛ける山口証券印刷株式会社のオリジナルブランド。切符や鉄道をモチーフにした文具や雑貨を開発しており、鉄道ファンを中心に根強い人気を誇ります。
北海道で私がよく出会う現役の切符から、横浜のミュージアムグッズ「革ノ切符」まで、切符は時代や場所を超えて人々の心を捉える魅力を持っています。幸福駅に貼られた幸せを祈る無数の切符も、単なる乗車券という役割を超え、旅の思い出や人々の願いを託したアイテム。そして今回のグッズも、鉄道の歴史を伝える媒体として旅行用のカバンにつけるのにぴったりです。
切符に付随する思い出は、旅が終わっても私たちの心を豊かにしてくれます。鉄道ファンはもちろん、そうでない人々にとっても、切符は心に残る大切な何かを運んでくれる存在なのかもしれませんね。
鉄道開業当時の切符をレザーで再現
乗車券という役割を超え、切符には人の願いが籠る
鉄道開業150周年を祝して作られた、レザー製のオリジナルキーホルダー。大正10年創業のきっぷ印刷所・クンペルとのコラボアイテムで、鉄道開業当時の3等の切符面をプリントしている。付け所を選ばない、大ぶりな輪っか付き。1100円。
鉄道[Railway]
日本の鉄道開業は1872年。新橋・横浜間を約53分で走り、文明開化の象徴とされた。運賃は一等、二等、三等の3等級制で、現在の1万5000円、1万円、5000円に相当する高価なものだった。写真は鉄道開業式当日の様子。

昭和戦前期をメインに都市横浜のあゆみを展示
「横浜都市発展記念館」
昭和戦前期をメインに横浜の変遷を学べる。旧横浜市外電話局を活用した、歴史ある建物自体にも注目だ。
- 住所 :
- 横浜市中区日本大通12
- 電話 :
- 045-663-2424
※表示価格は税込み
[ビギン2025年4月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。