好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]
南 貴之さんが選んだ「ジャン・プルーヴェ」のファサードパネル。今ならどう使う?
まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。
実際に建物の外壁に組み込んでやりたい
すごくファンの多いジャン・プルーヴェですが、実は僕は昔からあんまり夢中になれませんでした。これまでにテーブルやイスなんかを使ってはみたけれど、プルーヴェの家具は僕にとっては少しインダストリアルすぎるように感じてしまって。完全に僕の好みの話なんですけどね。で、そんな僕が珍しく買ったプルーヴェのアイテムがこれ。鉄製のファサードパネルです。
……めちゃくちゃインダストリアルなんですが(笑)、これは建築のカテゴリーで、家具ではなく建材という認識です。オークションを見ていたら、たまたまオススメに出てきて、「何これ!? ヤバい!」と思わず落札。
これを売ってた人はアート作品みたいに壁に飾ったりしていたみたいですけど、僕は実際に施工する建物の外壁にいつか組み込んでやりたいと思っています。
古い金属ならではのヤレた感じ、わかる人が見たらプルーヴェだけど、知らない人からしたらただの鉄。壁面加工として使うか、いっそ扉にしてみようか……なんて考えています。だけど長辺が171cmだからドアには少し小さいかな。
当時の建築の写真を見てみると、こういうパネルが何枚も連続で外壁に使われているんですが、本当に圧巻です。いっそこれ通りのモノをつくってもらえないか、鉄工所に本気で相談したいくらい。だけど、今だとそう簡単にはつくれないだろうなぁ……。なんて、今はそんなふうにどこで使うかを考えるのが楽しくてしょうがないんです。
建築は果てども朽ちずご健在
BRAND:―
ITEM:Facade Panel
AGE:1960s
薄い建築資材、しかし背景は分厚い
ジャン・プルーヴェ設計の建築においてはシルバーのアルミ製ファサードがよく知られているが、こちらは表面に白の塗装が施された鉄製。詳細は不明だが、学校などの大きな建造物に使用されたものである可能性が高い。
DETAIL
四隅をビスで留めるだけのシンプルなつくりで、当時は横長に配置されていた模様。複数枚を使う前提でつくられたものを、単体でどう活かすかが現代では重要になってきそう。

好事家
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、ディレクション業と型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。グラフペーパーでは先ごろ2025年春夏コレクションが立ち上がったばかりなので、そちらも必見だ。
※表示価格は税込み
[ビギン2025年4月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。