【スローソロ活のススメ】極上のリフレッシュ時間が叶う「週末農家」の始め方
【スローソロ活を始めてみる】
歳を重ねて仕事もある程度コントロールでき、まとまった時間が取れるようになってきた。ならばその時間、ゆったり没頭できる趣味に充ててみない? この先も長く楽しめる、極上のスローなソロ活のヒントをご提案します。
スマホを置いて、とりあえず1年間だけでもやってみない?
週末農家になってみよう
ネトフリやYouTubeに釘付けとなる過ごし方も、もちろんアリでしょう。でもデジタル時代の今だからこそ、非デジタルな趣味で心身を健やかにするってのはどう? 意外と気軽に始められる週末限定農業なら、その恩恵は計り知れませんよ♪
教えてくれたのは……
ハイマウント 国際事業部マネージャー 菊地敬文さん
バッグブランド「エイブルキャリー」のほか、スポーツボトル「ナルゲン」などの海外アウトドアブランドを取り扱う輸入代理店でマーケティングを担当。農業以外の趣味はトレイルランニング。3児の父としても奮闘中!
「得られるものは野菜だけじゃないんです」
農業を始めると聞けば、ハードルが高いと思うはず。それは菊地さんも同じでした。契機はコロナ禍に自宅の庭で家庭菜園をしていた際、近所の佐川さんが知り合いの農園を紹介するよと声をかけてくれたこと。「最初は断るつもりでした。僕には無理だって」。それでも挑戦したのは、前から興味はあったから。「無理ならやめればいい。まずは1年試してみようと思いました」
(左)田中さん(左から2番目)佐川さん(右)管さん
近所のシェア農園で150m²の農地を借り始めた菊地さん。利用料は年間5000円。耕うん機も無料で借りられて、土の状態もよし。「作業道具を揃えると、スムーズに始められました。しかもシェア仲間の佐川さんや管さん、田中さんたちが教えてくれたおかげで、一発目から大根の栽培に成功。自分で作れた喜びはもちろん、こうした交流もハマった理由」
それにしても、本当に週末だけで野菜は育つのか。「毎日手入れをしなくても、想像以上に逞しく育ちます。もちろんラクではないし、虫に食われてダメになったこともありますが。失敗を繰り返すうちに、家族で食べきれないほど収穫できるようになりました」
外にいることが好きな菊地さんにとって、農作業は最高のリフレッシュ時間。「土をいじっていると、頭がクリアになる。だから仕事⇔週末農業のサイクルを、バランスよく楽しめています。体は動かすけど、体力的に無理をせずに済むので長く続けられそうです」
そんな菊地さんが考える農業の醍醐味とは何なのか。「手塩にかけたものが、収穫という形で還ってくる喜びは何物にも代え難い体験です。それを味わえる喜びもまた然り。自分で育てた野菜を食べるとき、しっかり味わおうと味覚が研ぎ澄まされるんです。そうした特別な食体験が得られることが、作り手の醍醐味かな」
1年を通していろいろ栽培・収穫できる
畑を訪れたのは、2024年12月某日。冬野菜の代表格・白菜からブロッコリー、ネギなどたっぷり収穫。一方、春に収穫予定のニンニクはすくすくと芽を伸ばしていた。農業は暖かい時期だけでなく、1年を通して楽しめるのだ。
1 Year Schedule
冬は少し落ち着くものの、3月の「春ジャガイモ」に始まり、1年を通してさまざまな旬野菜の栽培・収穫が楽しめる♪ スペースの都合で全ては載せきれませんが、菊地さんの1年間ダイジェストをご参考あれ。
1月:ー
2月:春ジャガイモのための土壌を準備
3月:春ジャガイモの植え付け
4月:イチゴ、えんどう豆の収穫
5月:ナス、キュウリ、トマト、ネギ、里芋などの植え付け
6月:春ジャガイモ、玉ねぎ、ニンニクの収穫
7月:ナス、キュウリ、トマトなどの収穫
8月:秋野菜のための土壌を準備
9月:秋ジャガイモ、ブロッコリー、白菜、大根などの植え付け
10月:玉ねぎ、ニンニク、イチゴ、えんどう豆の植え付け
11月:ネギ、里芋の収穫
12月:秋ジャガイモ、ブロッコリー、白菜、大根などの収穫
1 Day Schedule
2024年12月某日に密着! 種まきや苗の植え付け時期、作物によって作業内容やボリュームは変わりますが、週末ごとに行っているルーティンをざっくり教えてもらいました。
[10:00]農地に到着
[10:10]堆肥をかき混ぜてしっかりと発酵させる
「まずは堆肥作りから。畑の雑草や米ぬか、牛・鶏糞などを混ぜ、約30分間撹拌します」。すると微生物が有機物を分解し発酵。4〜5ヶ月繰り返すと、理想的な土壌環境を作り出す堆肥が完成する。
[10:30]水や肥料を撒きつつ畑全体を隈なくパトロール
水・肥料をまきながら、作物の健康状態も確認。「週末だけだからこそ、手入れは細やかに。たとえば冬だと霜が大敵。野菜が凍って腐らないよう、葉をロープで結んだりネットをかけたりします」
[12:00]お昼休憩
[13:00]ひたすら無心で雑草の処理に励む
栄養や水分を横取りしたり、害虫発生で周囲に迷惑をかけたり。雑草は百害あって一利なし。「草刈りが一番大変な作業。とくに夏は雑草の成長が凄まじく、1日のほとんどを草刈りに割いています」
[15:00]実った野菜があれば収穫していく
収穫時期を迎えた作物がある場合は、収穫作業も同時に行っていく。「収穫はタイミングと潔さが大切です。もっと大きくなるまで待とうかなと欲張ると(笑)、美味しくなくなってしまうんですよね」
[16:00]終了! 帰路に就く
どうやって始めるの? 超基本Q&A
週末農業の魅力はよ〜くわかった。でも、実際どうやって始めたらいいの? いくらかかるの? 本当に週末だけでやれるの? と、不安が拭えない人のギモンを解消するQ&Aをサクッとご紹介。
[Q.]そもそも農地ってどうやって用意するの?
[A.]まずは自治体に問い合わせてみよう。使われていない農地も意外と多し!
個人の農地でも「利用者募集」の掲示がされているケースあり
まずは自治体のHPをポチッと検索。市民農園や貸し農園の募集概要が載っている場合があるので参考にしよう。また農業を始めてから「あ、ここも農地を貸しているんだ」と気づくことも多いという菊地さん。近所で張り紙を探す、ツテを辿ってみるなどもアリかも。
[Q.]ぶっちゃけ費用ってどれくらいかかるの?
[A.]菊地さんの場合、年間で大体2万円くらい
気付けばホームセンター通に(笑)
埼玉県越谷市某所の利用料は年間5000円。肥料や石灰などの消耗品は約1万5000円。農具を一括購入した初年度は約5万円かかったが、それ以降のランニングコストは約2万円と結構お手頃だ。苗や種も安く揃うホムセンはさながら農家のテーマパークで、よく訪れているそうな。
[Q.]本当に週末だけで育ってくれるの?
[A.]ご近所に配らないと消費しきれないほど……(笑)
お昼休憩のときに鍋料理を作ることも
トウモロコシなど毎日管理が必要な作物は除き、週末の手入れだけで野菜は育ってくれるそう。プロ農家でもないので形状がイレギュラーなものになってもそれはそれで味だ。収穫量は家族で消費しきれないほどで、ご近所へのお裾分けや、仲間で持ち寄って鍋を楽しむことも!
※表示価格は税込み
[ビギン2025年3月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。