好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]
南 貴之さんが手に入れた北欧の照明は、電気がつくアート作品でした
まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。
照明というより、電気が点くアート作品、という感覚
僕の想像だと、普通「ガラス作家のつくる照明」というと、ガラスがメインでできているものを想像すると思うんです。当たり前なんですけど。でも、これはすごく実験的。スウェーデンのガラス作家、エリック・ホグランのペンダントランプです。
工業デザイナーのアイナー・バックストロームさんという方との共作だそうで、ホグランさんの色が出ているのは主に嵌め込まれた緑色のオブジェの部分。スイッチを入れると、ここが光を通します。
変だなぁ、ちょっと気持ち悪いなぁと思いつつ、なんだか妙に気になってしまう存在感があるのが、この照明の特異性ですよね。
色付けされたガラスの作品が多いホグランの中でも、僕が好きなのは塊のよう造形のもので、キャンドルスタンドだとかをいくつか持っています。そんな中で、こういうものもあるのか! と、興味本位で手に入れました。
これは平面と立体とを組み合わせる構造を模索した結果なのか……? なんて想像をふくらませつつ、生まれた経緯は謎のまま。海外の空間づくりは日本と違って天井の一点から強い光を採るっていう考え方じゃない場合も多くて、これもやっぱりすごく明るいわけじゃない。照明というより、電気が点くアート作品という感覚です。
上級者向けなデザインだよなぁとも感じるし、どういう空間で使うかも、パッとは思い浮かばない。だけど、あんまり深く考えずにとりあえず取り付けてみるくらいでいいんじゃないでしょうか。
宙に浮くあやし・いとしの薄あかり
BRAND:ATELJÉ LYKTAN
ITEM:PENDANT LAMP
AGE:1960s
共同制作で生まれた異色の北欧デザイン
真ちゅう製のプレートを三角柱のように折り、大きな3つの面に半球状のガラスのオブジェを嵌め込んだ吊り下げ式の照明。サイズは比較的小ぶりだが、インダストリアルな質感と無機質なディテールが空間内で主張する。
DETAIL
緑色のアートガラス部分は内側の光を通すことでレリーフの模様に不思議な陰影が生まれる仕組み。あくまで飾りのようでありながら、ガラスが引き立つよう設計されている。

好事家
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、ディレクション業と型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。1月18日には、グラフペーパーのセルヴィッジデニムシリーズに加わった新色のブラックが発売される。
※表示価格は税込み
[ビギン2025年3月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。