好事家・南 貴之のヴィンテージインテリア紀行[古具のほそ道]
南貴之さんがオランダの古本屋で見つけたヴィンテージ本の素晴らしさ
まだ見ぬグッドデザインに出会いたい―。その想いから世界中を渡り歩き、掘り出し物を見つけては手に入れ、また買い逃しもしてきた南 貴之氏。そぞろ神に憑かれた現代の旅びとがおくる、情熱と偏愛の古物蒐集譚。
内容はもちろん、アートディレクションも素晴らしい
この夏、久々にヨーロッパに行きました。ベルリンからアムステルダムに移り、さらにずっと見たかったリートフェルトのシュレーダー邸へ。その後、一緒に行った友達は「ミッフィー美術館が観たい」と言い出し、全然興味がない僕は別行動することに。
ユトレヒトの街をぶらついていると、気になる古本屋さんが。そこで出会ったのが、ガラスケースの中にあったこの丹下健三の作品集。日本で安く売っていたら嫌なのでネットでコソコソ調べるも、やはりここのはかなり安い。旅先だし、重たい本はなぁ……と思いつつ、まぁ買いますよね(笑)。
もちろん丹下さんは日本を代表する建築家だし、つくったものもとにかく格好いい。なのに、それが壊されてしまうという話も耳にしていて。もう二度とつくれないのに本当に馬鹿げてると常々考えていたので、改めて彼がどんな仕事をしてきたのか、向き合えたらと思ったんですよね。
自分が生まれる前の本だけど、内容はもちろん、布張りの装丁やアートディレクションも素晴らしい。建物は所有できないけど、少しだけこの本で所有欲が満たされる気もします。お店を出てユトレヒトの駅に向かう僕はきっとニヤニヤしていたことでしょう。
強いて言うなら、実はこれが2冊シリーズの作品集であると、買った後に言われたことだけが悔しかった(笑)。ここからは、2冊目を探す旅。もし譲っていただける方がいたらぜひ、ビギン編集部までご一報ください(笑)。
アーカイブ、つくり手死せど威風は死せず
BRAND:BIJUTSU SHUPPAN-SHA
ITEM:BOOK
AGE:1966
時代を越える丹下建築の空気感までパッケージ
東京都庁舎や香川県庁舎等、丹下氏の13の仕事を写真や論文でフィーチャーした『現実と創造 丹下健三 1946-1958』。この翌年、続編にあたる『技術と人間 丹下健三+都市・建築設計研究所 1955-1964』が刊行されている。
DETAIL
布張りの装丁を手掛けたのは、日本の近代グラフィック史に名を残す原 弘(はら ひろむ)。伝統とモダニズムが同居する丹下の作風が、ブックデザイン自体にも反映されている。

好事家
南 貴之
1976年生まれ。国内外のブランドのPR業、ディレクション業と型にはまらず活動中。公私混同しながら世界中のマーケットを巡り、日々新たな良品を探している。グラフペーパーでは恒例のデサントとのコラボレーションによるダウンが11月22日に発売される。
[ビギン2025年1月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。