誰もが「ポルシェ」に憧れるのはナゼか? 基礎知識から人気モデル、中古相場まで徹底検証
お洒落のプロは古き良きを愛でる
Classic PORSCHE Style(クラシック ポルシェ スタイル)
圧倒的な性能と状態の良さを誇る近年のモデルにはない古き良きクラシックポルシェの魅力はどこにあるのだろうか。本物を見極める審美眼と確固たるモノ作りへの美意識を備えるデザイナーであるお二人に、自身の愛車について伺った。
「エンジン音と操作性が掻き立てるドライビングプレジャーがあります」
MAKERS デザイナー 手嶋 慎さんとポルシェ912(1967年式)
1979年生まれ愛媛県出身。レザーシューズ専業ブランド「Makers」を立ち上げ、デザインから制作まで行う。学生の頃よりクラシックスポーツカーに惹かれ、かつては日産フェアレディZを愛用。ポルシェの写真集をきっかけに993を購入するようになり、その後、今まで乗った中でも最も古い1967年式の912を購入した。
「この912は運よく知り合いの紹介でレストア途中のものを受け継ぎ手に入れたものですが、長く憧れていた912に実際に乗ってみて何より驚いたのはそのエンジン音でした。というのも、電子機器などが少ない後部に空冷エンジンを積んでいるクラシックポルシェは、味わいのある音が強く体に響いてくるんです。よくマフラー音は声、エンジン音は心臓と言いますが、まさに、車の鼓動が全身に伝わるようです。
後輪の上の空冷エンジンが身体に心地良い音を響かせる
それに実は、912のエンジンは6気筒ではなく4気筒なので重量が軽く、リヤタイヤの真上にエンジンがあるため重量バランスが911よりも優れているんです。特に曲がるという動作に関しては911を上回るフィーリングが得られます。この音と操作性による圧倒的なドライビングプレジャーは、912のクラシックポルシェでしか感じられませんね。
4気筒エンジンだから味わえる小回りのきくハンドリング
そして、こんなに味わいのある車なのに、モノとしてしっかりしているので、デイリーユースでもガシガシ使える。私自身は、近くに買い物に行くときや大阪の出張もこの912を相棒にしていますよ。何十年も前に作られたのに損なわれない、モノとしての完成度の高さに触れられる。それもクラシックなポルシェに乗る魅力ではないでしょうか」
「車自体にカルチャーがあり人や趣味との出会いを生みます」
FDMTL デザイナー 津吉 学さんとポルシェ964カレラ2(1992年式)
1976年生まれ大阪府出身。日本の熟練職人が手がけるデニムアイテムを中心に展開する「ファンダメンタル」のデザイナーを務める。初の愛車として2022年に「991 タルガ4」を入手。その後マニュアル変速が可能な4速ATを搭載した「964 カレラ2」を購入。コロナ禍からは、964のルーフに荷物を積んだキャンプにも挑戦する。
「旧車のポルシェに乗っているとかなりの車好きだと思われがちですが、実は免許を取ったのは数年前なんです。40代になり流石に運転ぐらいできないといけないと思い教習所へ通っている時期に、たまたまネット広告で見た現行モデルの991に一目惚れして、まだ免許もとってないうちから購入を決意しました。
その991も気に入っていたのですが、次第にポルシェのことを深く知るようになると、やはりポルシェらしいクラシックなディテールのモデルが気になるんですね……。そして辿り着いたのがこの964です。空冷ポルシェを象徴するカエル目のライトや美しい流線を描く車体のデザインは、毎日見ていても飽きることがありません。
それに、この年代のモデルには珍しく、右ハンドルのATというのも私にとってぴったりだったんです。また、海外の方がポルシェのルーフにテントを乗せてキャンプをしている様子に憧れて、私もキャンプを始めてみたりもしました。
クラシックで耐久性も高いポーランド製のルーフを装備
それに、コンビニなどに停まっていると、同じポルシェのオーナーさんに話しかけられて交流が生まれることもあります。そのように車自体にカルチャーがあって、新たな趣味や人との出会いも楽しめるのも、空冷ポルシェの醍醐味ですね」
ドイツの名門「コンチネンタル」のオーディオを取り寄せて使用
※表示価格は税込み
[ビギン2024年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。