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連載[令和に響く昭和のハナシ]

【昭和レトロ】「日立」のステレオプレーヤーが近未来的デザインでエモい!

日立のステレオプレーヤー

エモさ満点のジャポニズム傑作を知る[令和に響く昭和のハナシ]
昭和を愛し、昭和暮らしを謳歌する平山 雄による、後世に語り継ぎたい名作語り。今回は、映画から出てきたようなステレオが登場!

Profile
平山 雄さん

昭和ヲタク

平山 雄さん

古物商として働きながら、SNSやブログを通じて昭和をレポート。著書に『昭和ぐらしで令和を生きる』(303BOOKS)など。

ちゃぶ台時代のものとは思えぬ近未来的デザインに惚れ惚れ

ここ数年は執筆業も充実しつつありますが、僕の本業は古物商。日頃、古道具の仕入れ、修理、販売を一人でこなしています。

仕入れについては、ほとんどが業者市場で競り落としてくるのですが、近頃は昭和レトロブームの影響もあって、落札相場がどんどん上がってきています。数年前までは誰も入札せずに安く落札できていたようなものでも、最近では「それ、高過ぎでしょ!」ってくらいの値がつくことも多くなってきました。

そんな中でも、以前から価格があまり変動せずに安く落札できるのが、コンソールステレオなどの大型家電なんです。あまり値がつかない理由については、組み込まれているレコードプレーヤーやラジオなどの機械モノは、たとえ業者であっても修理するのが難しく手を出しにくいことや、在庫を保管するのに場所を取るため、利益を出すのに効率が悪いなどの理由が挙げられます。

そういった背景もあって、この「日立 4SPEED STEREO PLAYER」も、お小遣いレベルの価格で落札しました。しかも運のいいことに、ラジオもレコードプレーヤーも壊れていなかったのです。製造時期については不明ですが、製品名にある「4SPEED」とはターンテーブルの回転速度が、16、33、45、78回転と4段階に切換えられるという意味で、SP盤にも対応していることから、おそらく昭和30年代中頃のものと思われます。

日立のステレオプレーヤー
「今でもたまにこれでレコードを聴きます」

このステレオの素晴らしいところは、なんといってもデザイン。極端に薄く平べったいボディに対し、極端に長い4本の脚という組み合わせが、まるでSF映画にでも登場しそうなスペースシップかのようです。ラジオに付いている4つのツマミは時代を先取りしたスケルトンになっていて、電源を入れると表示パネルに併せて点灯するのです。

日立のステレオプレーヤー
当時最先端だったであろうスケルトンデザイン

昭和30年代というと、ちゃぶ台や木製の洗濯板といった素朴なものがまだまだ一般的に使われていた時代なので、そのような風潮のなかにこれほどまでにスタイリッシュで近未来的なデザインのステレオが既にあったということに驚かされます。

素晴らしいのは見た目だけではありません。サウンドについても、真空管ならではの暖かみがあり、ラジオの受信音でさえ、まるでどこかのホールでしゃべっているかのようなリバーブ感があるのです。その聴き心地のよさは、のちに普及することになるトランジスタラジオからは決して得ることが出来ない、真空管特有のものなんですよね。これこそ、まさに僕が理想とするステレオです。

令和のイマ、どうなってる?
70年代のオーディオブームのなかでも、技術力を駆使して存在感を放っていた日立。「Lo-D」というオーディオ機器ブランドも立ち上げ、2019年まで展開していた。現在はブランドを終了し、事業を大幅縮小している。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2024年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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