デザインがモノを言うアクセ界で
「オールドメキシカン」ジュエリーがサードウェーブの予感!
装飾品のアクセは服や靴と違い、機能云々じゃなくデザインがすべての世界ですよね? ビギンではとくにナバホ族やホピ族などのネイティブアメリカン、エルメスも愛したアフリカのトゥアレグを推してきましたが、次に指名したいのは「オールドメキシカン」。その魅力に迫っていきます!
銀の採掘地“タスコ”が産んだどこかモダンな佇まい
写真右から3万9600円、4万1800円、5万9400円(フォート・ジェネラル・ストア)
5年前には目を付けていた『フォート・ジェネラル・ストア』の福井基記さんからSTUDY!!
「ずっしりした重みもイイんです」
滋賀県草津市のセレクトショップ『フォート・ジェネラル・ストア』の店主・福井さんは選りすぐりのオールドメキシカンをはじめ、北欧のデニッシュジュエリーなどにもいち早く注目。服好きからアクセの目利きとしても信頼が寄せられている。
力強さもありながら洗練されたデザイン!
メキシカンジュエリーのデザインを知る前に、まずは歴史をオサライ! 福井さんに聞くと「元を辿ると18世紀、スペイン人がメキシコのタスコという街で銀山を発見し、豊富な銀が産出されていました。これが後のメキシカンジュエリーへとつながっていきます」
【メキシコの首都から南西部に位置する銀の採掘地・タスコ】メキシコシティから南西約170kmにある街。銀山の発見で繁栄し、コロニアル建築による街並みの整備もあり、現在は観光地としても人気。多くの銀細工職人、工房が健在で、メキシカンジュエリーの生産は続いている。
時は流れて1920年代、タスコに米国の建築学者、ウィリアム・スプラットリングが訪れます。彼は以前からスペイン統治以前のメキシコにあった、メソアメリカ文明に興味を抱いていました。そこでタスコで採れる銀を使い、メキシコ本来の芸術性を取り入れた銀細工産業を興そうと、タスコをシルバージュエリーのデザイン・生産拠点とします。
【メキシカンジュエリーの礎を築いたウィリアム・スプラットリング】タスコに銀山はあったが、銀細工産業はなかった。そこで銀細工師を育て、1930年代に工房を開設。スプラットリングがデザインを監修し、メキシコの職人がジュエリーを製作した。「メキシコ銀細工」の父と呼ばれている。
するとメソアメリカ文明の芸術性とスプラットリングの建築的なデザイン性が融合したジュエリーはたちまち人気となり、職人、工房も増加。こうして今に続く、メキシカンジュエリーのベースができたとされています。
また、メキシカンジュエリーは欧米にも人気が広がり、NYの名だたる百貨店で扱われ、仏のメゾンがタスコに工房を構えたとか! 福井さんはそのオールドメキシカンジュエリーのクオリティに魅せられたそう。
【ニューヨーク発祥の有名百貨店でも取り扱われていた!】スプラットリングが礎を築いたメキシカンジュエリーはデザインと品質の評価も高く、『サックス・フィフス・アベニュー』など高級百貨店でも扱われた。欧州にも伝わり、仏のメゾンがタスコに工房を構えたという逸話も。
「無骨な趣もあるけど、都会的なデザイン性もある。ネイティブジュエリーでもヨーロピアンのそれでもない。そんな立ち位置に魅かれました。メキシカンラグをはじめ、メキシコ人は細かい手仕事を得意としてるし、ジュエリーも精巧。そしてヴィンテージにはしっかり重みがあり、硬派なムードもいいですよね」
たしかにネイティブな男っぽさと、ボールやチェーンを駆使したデザインが新鮮で、雰囲気に深みのあるヴィンテージってのも狙い目! アクセが大事になるこれからの季節、他と差別化を生むサードウェーブになるのでは!?
OLD MEXICAN JEWELRY
3つの代表的デザインを抑えよう!
①オーバル
オーバルはメキシカンジュエリーの代表的モチーフだが、その多くは表面に石が付く。ただこちらはシンプルな石なしのレアものだ。
②ボール&チェーン
ボールとバーがチェーン状に連なるデザインは、クールな雰囲気を醸し出す。どこか毒っ気が薫るのもオールドメキシカンならでは。
③DNA
メキシカンジュエリーといえばコレ!というほど象徴的なデザイン。DNAを想起させるチェーンとボールからなるらせん状が特徴だ。
シンプルな服装に程よいアクセントをもたらしてくれる!
今回紹介しているジュエリーは、いずれも1970年代ごろのもの。タマ数も少ないので、気になる方はお早めに。
※表示価格は税込み
[ビギン2024年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。