倉俣史郎&メンフィスを再検証! アートな家具の偉大なる価値を知る
アートな家具は人生の投資になる!
倉俣史朗とMemphis(メンフィス)の価値を知る
そのアーカイブが高騰を辿る一途で、没後もなお存在感を強める日本人デザイナー、倉俣史朗。彼も所属したエットーレ・ソットサス率いるデザイナー集団、メンフィスの個性と功績を踏まえ、その価値を再検証!人生を豊かにするアートな家具は、資産としての価値も抜群ですよ。
What’s Memphis??
好事家・南 貴之氏に聞く!「メンフィス」って何?
TAKAYUKI MINAMI(南 貴之)
国内外ブランドのPR業、ディレクション業と幅広く活動。世界のマーケットを巡り、日々新たな良品を探す好事家。メンフィス作品も所有する。ビギンにて「古具のほそ道」連載中。
[Q.]メンフィスって何ですか?
「一見アヴァンギャルドだけど実は明確な哲学が感じられるのがメンフィスの特徴だと思います。デザインを語る上で“メンフィス以前・以降”っていうフレーズがよく出てくるくらい、歴史の重要なターニングポイントになっています。本物のオリジネイターですね」
[Q.]ポストモダンの魅力って?
「僕にとっては80年代ってダサいもの。その時代にあってデザイン的に優れていたなと思える唯一のムーブメントがポストモダンです。やっぱりハズしの美学なのかな。背景にある当時のイタリアンデザインは日本との縁も深く、現代の日本人とも相性が良いはず」
[Q.]倉俣史朗ってどんな人?
「倉俣さんの家具って、言ってしまえば使い勝手が良いものではないと思うんです。それでも欲しくなるのは、一方で作品性がすごく高いから。用の美とはまた違う考え方で、そこに置いてあること自体が心に作用する、アートピースのような魅力がある気がします」
ビギン連載中の「古具のほそ道」。こちらでも紹介! 倉俣氏デザインのリヴォルビングキャビネットを所有。アメリカでの購入時エピソードとともに紹介してくれた。
「カラフルなものが目立つけど落ち着いたトーンもすごく美しい」ー 南 貴之
IMPERIAL
倉俣氏のメンフィス時代の代表作。地味な印象に見えるも、極端に脚の長いキャビネットという突飛なアイデアは、「デザインを解放する」(ソットサス)という思想に合致。既存のデザインに一石を投じた秀作だ。W350×H1500×D400mm。各121万円(メトロクス)
KYOTO
キョウトをはじめとするシリーズに用いられた素材が「スターピース」。人造大理石の工業資材「テラゾー」に鮮やかな廃ガラスを散りばめた、氏の代表的なマテリアルだ。既成概念を打ち破ろうとする挑戦的な姿勢が窺える。H700×Φ600mm。187万円(メトロクス)
倉俣史朗の代表作
ミス・ブランチ
薔薇の花を透明な液体アクリル樹脂の中に流し込んだ、氏の代表作。永遠に美しいままの薔薇が、無重力の世界を浮遊するような幻想的デザインだ。米国の劇作家、T・ウィリアムズの戯曲『欲望という名の電車』の主人公、ミス・ブランチ・デュボワが名前の由来。
《ミス・ブランチ》1988年 石橋財団アーティゾン美術館蔵 撮影=渞忠之 ©Kuramata Design Office
ハウ・ハイ・ザ・ムーン
建築資材であるエキスパンド・メタル(金網材)をインテリアに用いた画期的な作品。フォルムは伝統的な椅子でありながら、それまで家具に使われることのなかった素材を取り入れたアイデアが光る。氏が生涯追求した「夢心地」に通じる、透明感と繊細さが特徴的。
《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》1986年 富山県美術館蔵 撮影=柳原良平 ©Kuramata Design Office
硝子の椅子
氏の盟友でもあるガラス職人、三保谷友彦氏にガラス同士を接着できるフォトボンドを紹介されたことから生まれたチェア。ビスなどの接続パーツを使わず、ガラスのみで構成された美しい一脚だ。新しいこと、それまでになかったものを生み出す姿勢も氏の真骨頂。
《硝子の椅子》1976年 京都国立近代美術館蔵 撮影=渞忠之 ©Kuramata Design Office
SHIRO KURAMATA(倉俣史郎)
くらまた・しろう(1934-1991)。60年代から90年代にかけて、世界的にも傑出した名作を生み出し、高い評価を得たインテリアデザイナー。その独自性から「クラマタショック」という言葉も生まれるほど、意外性に満ちたプロダクトを発表。80年代、伊・発の前衛的デザイン集団「メンフィス」に参加した。毎日デザイン賞、日本文化デザイン賞を受賞。フランス文化省芸術文化勲章を受勲した。
「倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙」開催中
2024年現在、京都国立近代美術館で氏の展覧会を実施中。代表作を直に観覧できる貴重な機会だ。■会期:6月11日(火)~8月18日(日) ■観覧料:一般1700円。休館日など詳しくはHPにて。(問)京都国立近代美術館 ☎075-761-4111
「ソットサスは日常の風景から配色の着想を得たりしたそうです」ー 南 貴之
CARLTON
異形の本棚、カールトンはかなり奇抜に見えて本棚としての機能をしっかりと担保した名作。まさに人生を豊かにするアートな家具として、絶大な存在感を放つ。W1900×H1960×D400mm。330万円。1/4スケールのミニ版(25万3000円)もあり。(メトロクス)
中心部には引き出しも設置されている。家具としての機能性を損なうことなくアート的な表現を追求した名作だ。
ETTORE SOTTSASS
エットーレ・ソットサス(1917-2007)。オーストリア、インスブルグ生まれ。トリノ工科大学卒業。1958年にオリベッティ社のデザインコンサルタントに就任。伊の権威的デザイン賞、コンパッソ・ドーロも受賞。81年にメンフィスを結成し、ポストモダンを主導した。
「ヴィンテージが枯渇してるミケーレ、新品で欲しいな」ー 南 貴之
KRISTALL
SF作品の地球外生命体を思わせる4本脚のサイドテーブル、クリスタル。一瞬で目を奪われる独創的な造形とカラーリングの一方で、他のメンフィス作品と同様に家具としての役割も十分に果たす点も見事だ。W500×H650×D630mm。37万4000円(メトロクス)
上写真は南氏自身も所有する名チェア、ファースト。近未来的なデザインが印象的。30万8000円。(メトロクス)
MICHELE DE LUCCHI
ミケーレ・デ・ルッキ(1951-)。イタリア、フェラーラ生まれ。フィレンツェ大学卒業。家具や照明のデザインを行う傍ら、ソットサスらとメンフィスを結成。ポストモダンの旗手と言われ、多くの企業で製品を手掛けた。現代を代表する建築家・デザイナーの一人だ。
※表示価格は税込み
[ビギン2024年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。