密にニヤリ 実際なぁに? そのコトバ[おとなの嗜み]
【フレンチスタイル】“フランス的モノ作り”って?
教えてくれた方は…

[オーベルジュ]デザイナー
小林 学さん
洋服=工業製品という意識がフランスにはないのでしょう
1966年生まれ。1998年に「スロウガン」、2018年に「オーベルジュ」をスタートさせる。フレンチファッションの分析&製作のスペシャリストであり、深淵まで服を語るYouTubeチャンネルも人気。
スタイルについてはわかった じゃあ“フランス的モノ作り”って?
公開中【フレンチスタイル】とは…
「基礎の理解」編こちら
「おとなの解釈」編こちら
手間を手間と思わない我が道を行く孤高のモノ作り!
フレンチスタイルが多様なスタイルをMIXして醸成されたものであることはわかりました。じゃあ、モノ作りにおける“フランス的”ってどんなものをいうの? このお題については、あらゆる角度からフランスの服を解析し、現代のスタイルへと昇華している「オーベルジュ」の服に学びましょう。
トップ写真右のシャツ「シモーヌ」をご覧あれ。袖や肩、首裏に細かくギャザーが入っていますが、この襞はフランス的モノ作りに顕著だとデザイナーの小林さん。
「アメリカならギャザーではなく、生地を畳んでタックを設けるでしょう。誰が作っても同じ表情になりますから。でも生地を寄せて縫うギャザーだと、作り手の感性や技量で素晴らしい表情にもなるし、不格好にもなるんです。作業も大変ですが、それを苦とは思わないのがフランス人。工業製品であるという意識がないのでしょう」
翻ってトップ写真左のジャケット「アジェ」は、グイーンと後ろへ流れながら広がるAラインシルエットに、フランスの服にしか見られない唯一無二の個性が。
「1800年代後半のサックコートが原型なのですが、胸板を厚く見せるためなのでしょうか、なぜこんなに変わった型紙なのか想像を掻き立てられます。フロント4つボタンで、上2つしか留まらない仕様もお約束です」
合理的? 何ソレ?ってな我が道を行くフランス的モノ作り──。服好きなら、刺さらないわけがないでしょ♡
ココまでやるの!?な繊細すぎるギャザー
AUBERGE[オーベルジュ]
「SIMONE」シモーヌ
ビヨードというスモックをベースにした一着。直線で構成された肩の縫い線は、縫製のプロではない農家のマダムが縫えるように考案された仕様。身頃にゆとりを出すべく、その下には細かなギャザーが寄せられている。軽やかな生地と相まって、ふわりと広がるシルエットは必見だ。3万5200円。
大小の無数の襞が柔らかな表情を醸す
狭い袖口に対するアームであったり、肩に対して広い身頃であったり、パーツの差寸を合わせるために、タックではなく細かなギャザーを寄せるのがフレンチ流。タックのほうが手軽と思えるが、それではこうも柔らかくエレガントな表情にはならない。手間を掛ける意味があるのだ。
その独特なシルエット 後ろに流れるAライン
AUBERGE[オーベルジュ]
「ATGET」アジェ
テーラードジャケットの原型とされるサックコートを基に、型紙製作をパタンナーの巨匠、安島正二氏に依頼。完成した、見とれるほどに優雅なコットンリネンジャケット。7万400円(オーベルジュ)
下寄りの胸ポケ&背中寄りの腰ポケも個性的
肩もコンパクト
130年ほど前に作られたサックコートを原型にしたこちらは、シルエットがとにかく個性的。コンパクトな肩から後ろへ流れるように裾が広がり、かくもエレガントなAラインを描くのだ。こうしたパターンは第二次大戦前まで見られたものだが、現在はなくなってしまったとか。
※表示価格は税込み
[ビギン2024年6月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。