最高級ランドセルでも有名な土屋鞄の制作現場に潜入
【土屋鞄】革のウマ味を引き出す“秘伝世法”
余白の美学が宿る最も“絵になる”レザートート
TSUCHIYA KABAN[土屋鞄製造所]
ディアリオ トールトート
2008年に誕生し、進化を続けながら親しまれてきた定番。保形性を高める四隅の“つまみ”や、握りやすいよう上部に行くほど細くなるハンドルなど、機能と美しさを両立する工夫が冴える。W34×H35×D13cm。6万2700円。
土屋鞄の定番トートの制作現場に潜入!
使い勝手に収納力と鞄にはさまざまな選びのツボがありますが、こと革鞄のツボといえば、エイジングによっていかに味が増すか? これを突き詰めて何がベストかを考えたとき、ビギンはある革鞄に辿り着きました。それが、最高級のランドセルでも有名な土屋鞄の“ディアリオ トールトート”!
写真下の鞄は約3年モノですが、艶といいムラといいたまらないでしょう? というわけで革のウマ味を引き出す秘伝製法を探るべく、制作現場に潜入してきた次第です。
注目すべきは、革それ自体はもちろん、革の味を際立たせるデザインの妙。側面を大きく2枚の革で構成したミニマル顔が要なわけですが、上部のみを手縫いでつまむことでステッチを最小限にしながら自立する保形性をもたせたり、目立たぬよう底面のパーツを側面の端から2cm内側に縫ったり──。機能性を高めながら外観をすっきりさせる工夫には、思わず舌を巻きます。
一方であえてステッチ部分を集中させているのも、主役たる革を引き立てるため。これらの疎密加減が完璧にバランスしてこそのウマ味♡ってわけなのね。
ちなみにボディの縫製は表裏を返した状態で行われるのですが、革にシワやキズをつけずにこれを表へめくる際には、細心の注意が必要だと職人氏。隅々まで丁寧な仕事は、メイド・イン・ジャパンなればこそ。美しいエイジングを叶える第一の柱がここにあります。
革のウマ味を引き出す秘伝製法を知っているか?
土屋鞄の制作現場に潜入!
秘伝製法①
【オイルバランスの黄金比“オイルメロウレザー”を採用】
植物タンニンでなめし、オイルを何度も含ませることで革本来のナチュラルな味と艶を引き出したオリジナルレザー。自立するハリを損なわないよう、オイルの量も計算づくし!
秘伝製法②
【手縫いでつまむことで革の自然な曲面を活かす】
小脇に抱えやすく、かつ口あきを大きくするM字設計に欠かせないのが、手縫いの閂。おまけに上部のみつまむことで、独特の陰影が生まれフォルムに自然な曲面が生まれる。
底面のパーツはあえて縁から2cm内側で縫う
秘伝製法③
【ステッチを隠して革を最大限に見せる】
底面パーツは縫製部が目立たぬよう、ミシンで縫えるギリギリ、縁から2㎝内側で縫いつける。側面のM字マチと同様、革のつなぎ目を極力隠すことで革の表情を際立たせるのだ。
秘伝製法④
【ボディに視線を誘導させるあえてベージュ色のステッチ】
ミニマル顔を追求し革のつなぎ目を見せない一方、あるべくしてステッチがある場所は、ベージュ色の糸でアクセントをつける。この緩急がまた、革のウマ味を引き立てるのだ。
商品の問い合わせ先/土屋鞄製作所
☎ 03-3667-4545
※表示価格は税込み
[ビギン2024年5月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。