紀伊半島独立!? 岸本県知事×和歌山大莫小のタッグが実現
和歌山のニッターや染工場数十社により構成される和歌山ニット工業組合の有志と『Begin』が手がける、和歌山のニットの魅力を世界に発信するプロジェクト「和歌山大莫小」(詳しくはこちら)。2021年にスタートした本プロジェクトも7回目を迎えました。7回目のテーマは「タッグT」。それにちなんで今回、和歌山大莫小と岸本周平和歌山県知事のタッグ取材が実現! その一部始終をお届けします。
── Beginの本田です。まず背景から説明させていただくと、和歌山は世界的なニット産地で、高い技術を持つユニークな工場が集積しているんですが、全国的にはほぼ知られていないんです。
岸本知事:はいはい。
──そんな状況をどうにかしたいと和歌山ニット工業組合青年部・前会長の風神さんからお話をいただいたのが2021年。Beginとしても日本の産地に貢献できることをやりたいと考えていて、和歌山大莫小の企画がスタートしました。
岸本知事:「わかやまだいばくしょう」というんですね。
──はい。岸本知事は勿論ご存知だと思うんですが、ニットを表すメリヤスは「莫大小」と書きます。それを読める人が増えれば、和歌山ニットも知られるんじゃないか。当時はコロナ禍だったので「みんなが笑顔になれば」という願いも込め、莫大小の莫と大を入れ替えて「和歌山大莫小」という名前にしました。
岸本知事:なるほど。それがブランド名ですね。
──はい。和歌山ニットの多様性を伝えるため、毎回テーマを設け、共通のパターンに各ニッターが得意とする生地を載せて、生地(編み方)が違うとこんなにも服の表情や着心地が変わるんだよっていうところを表現しています。
岸本知事:確かに。ここから見ただけでも全然違いますね。
──よろしければ近くで。

岸本知事:面白いね。同じデザインでそれぞれの会社が生地を作るというアイデアはとても良いと思います。
──今年で4年目に入りますが、和歌山ニットってすごいんだねと言ってくれる人少しずつ増えてきています。
岸本知事:我々の世代は「莫大小=和歌山の地場産業」ってイメージが強くてね。同級生にもニット会社の息子さんが多くいました。ぼくも、子供の頃「莫大小」って言葉を目にして「何でこれでメリヤスやねん」って不思議に思った記憶があります。でも今の若い子は読めないでしょうから、こういうブランディングは素晴らしいと思います。
──最近はオフィスカジュアルが進み、Tシャツやスウェットなどのニット製品の出番が増え、織物の代表だったシャツもニット組織で作られるノンアイロンシャツが人気を博しています。そんななかで、知事が和歌山のニットに期待されることはありますか?
岸本知事:和歌山県庁は一年間通してノーネクタイ・ノージャケット運動をしているんです。私も今日は表彰式だったのでネクタイをしていますが、普段はノーネクタイでワイシャツも着ません。若い職員もほとんどがノーネクタイです。そういう意味でニットがカジュアルな働き方の象徴として脚光をあびるようなればと思いますね。
──和歌山ニットを世界的にしたいという目標があって、昨年は台湾で和歌山大莫小のポップアップを行いまして。
岸本知事:それは良いですね。日本はマーケットが小さくなっていますから。世界に和歌山ニットを売り込むのが速いと思います。県庁としても応援しますよ。
──大阪・関西万博もその意味では最高の場所だと考えています。
岸本知事:和歌山館の出展募集をしているので、「ステージ」というカテゴリで応募してもらえればと思います。
風神さん:現在、和歌山大莫小の参画企業は10社ありまして、みんなが一致団結できる目標として万博を掲げています。万博の舞台で世界の皆さんに和歌山ニットをPRしたいと考えているので、ぜひ応募させていただきます。
岸本知事:ニットのファッションショーだったり、編み機を置いて作るところをみせるとか。色んなアイデアをみなさんでお出しになったらいいんじゃないですかね。
──今回、和歌山大莫小のテーマは「タッグT」ですが、和歌山県もしくは岸本知事がタッグを組むなら、お相手は?
岸本知事:あまり考えたことはなかったんですが、そうですね…。実はぼく、和歌山を独立させようと思っていまして。和歌山県って8割が山林で長らく経済発展の枷になっていたんです。それが今は木を伐って植えるなどの整備をすれば、カーボンクレジットとしてお金になるんですね。邪魔だった山が宝の山に変わる。もちろんそれだけじゃ足りないですが、脱炭素で色んな手を使い、和歌山だけで狭いようなら三重と奈良、3県で紀伊半島独立を目指したいです(笑)
──そんなことをお考えだったのですね。独立の話、我々記事に書きますよ、いいんですね?(笑)。それはそうと森林の話、とても興味深いです。和歌山のニッターにも、大量生産時代に効率が悪いという理由で海外の産地では使われなくなった古い編み機が残っていて、今はそれが武器になっているんです。豊染工も最近100年前の起毛機をレストアされて。
田中さん:工場で眠っていた機械をフルレストアしました。新しいものではなく、古いマシンを直して世に戻すのが和歌山らしいと思いまして。
──その機械でしか出せない風合いがあり、もう新しくは作れないマシンなんです。和歌山にはそんな博物館級の機械がゴロゴロ現役で稼働しています。
岸本知事:それはむちゃくちゃ面白いですね。物語がある。
風神さん:和歌山のニッターはモノづくりのプロなんですが、セルフプロデュースやブランディングは苦手な人間が多い。自分たちではわからないんですね。
岸本知事:それはプロにやってもらったらいい。
風神さん:Beginさんに助けて貰い、出会いを大事にして産地を盛り上げていきたいと思います。
岸本知事:ブランディングから入って、素晴らしいストーリーもある。和歌山大莫小は成功間違いなしだと思います。
──ありがとうございます。がんばります。
あっという間に60分のタッグ取材が終了。岸本知事から「世界を目指せ」という激励をいただき、気持ちを新たに大阪・関西万博を目指していこうと決意した大莫小チーム。出展が叶うかは来年の4月をお楽しみに。
https://market.e-begin.jp/pages/wakayama_daibakusho7
写真/中島真美