今日から始める美味しい暮らし[ベジカジライフ]
焚き火で育つ”山専用”ケトル
「ビジカジ」に始まり、あらゆる分野でカジュアル化が加速する昨今。次のジャンルは? と問われれば、それはズバリ、ガーデニングである! ベジタブル×カジュアル、名付けて「ベジカジ」。週末農家・坂下史郎さんが徒然なるままに書き連ねる、ちょっぴり土臭くて小粋なファッション放談。
週末農家・坂下史郎のベジカジライフ
ファイヤーサイドのグランマーコッパーケトル(小)
年も明け、塩山生活も8年目に突入した。例年だと野菜作りも小休止の時期だが、寒さに強い根菜などは少しだけ育てていて、今年は黒丸大根という、読んで字の如く黒くて丸い大根を育ててみた。1500年代からヨーロッパで愛され続けている歴史があり、黒い見た目も相まって収穫の時はさながら化石発掘である(笑)。短期間でよく育つので、収穫のタイミングさえ見極めて育てれば、初心者の方にもおすすめの野菜だと思う。肝心の味はというと、スーパーに並ぶような白い大根とは違い、皮は黒くて固いが中身は白くて柔らかく、ホクホクとした食感でとても美味しい(そもそも名前に大根と入ってはいるが、種としてはどちらかというとラディッシュに近いらしい)。生食でもよし、炒めてもよし、煮込んでもよし。また大根と同様に、葉も炒めて美味しくいただくことができる。
そして今回紹介するのは、野菜作りには直接関係がないものの、冬の醍醐味・焚き火にまつわる道具。冬場の土いじりの休憩がてら飲むコーヒーや、夜に火を囲んで呑む焼酎のお湯割り用の湯を沸かすために購入した銅製のケトルである。長野県を拠点に焚き火を楽しむためのギアの輸入や製作を行う「ファイヤーサイド」が手掛けた、古き良きアメリカのケトルを日本の技術で蘇らせたオリジナルの商品だ。どうやら代表のポール・キャスナー氏のお祖母さまが長年愛用していたケトルが元ネタらしく、無骨な注ぎ口のビスなどザ・アメリカな雰囲気が最高なのである。
もともと薬缶やケトルは自宅、事務所、山暮らし、ハイクなどそれぞれの時で専用のものを使うことにしている。同じ湯を沸かす道具でも、都会の自宅と山の家ではデザインや材質、大きさなど、それぞれの生活にハマるものを使うほうがより充実感を得られる気がするからだ。そんな考えのもと色々と物色してこのケトルに行き着いたわけだが、写真を見てもおわかりの通り、使い込んでススがついた味わいがなんともカッコいい! それに火で熱せられたケトルを持って器などに湯を注ぐのは重いし危険だが、このケトルは後部のバーのおかげで、直接触れずにお湯を注げるのだ。しかも何だろう? この黒丸大根との親和性は! 1500年代から愛されている大根とアメリカで代々受け継がれたケトル、黒ずんだ表面の内側に秘める歴史や様々なストーリーが想像できるからかもしれない。
最後に余談だがこのケトル、新潟県長岡市のふるさと納税のラインナップにも入っているので、そちらで購入するのも良いかも。
ファイヤーサイドのグランマーコッパーケトル(小)
アメリカ・メイン州にあるポール・キャスナー氏の祖母の家で代々受け継がれてきた19世紀のケトルが、新潟のヘラ絞り職人の手によって復活。クラシックなデザインはもちろん、銅は熱伝導に優れ、湯沸かしもあっという間だ。3.3ℓ。3万5200円(ファイヤーサイド)



※表示価格は税込み
[ビギン2023年4月号の記事を再構成]文/坂下史郎 写真/丸益功紀(BOIL)