日本の巨匠の小さくても偉大な“レムノス”の置き時計
欲しいモノ大全「デザイナーズ日用品」
部屋の模様替えに、新生活の始まるこの季節はベストシーズン。いっちょ素敵なインテリアを新調したいところです。 が、物価高が続く昨今、“大物”に手を出すのはなかなか勇気のいる話……。そこでビギンはコスパの最大化を考えました。 インテリアのプロ、ジョー スズキさんをアドバイザーに迎え、ツウのみぞ知る裏話とともに、間違いのない理由をみっちり解説します!
ビギンと一緒に語れる日用品を選びました!
インテリアの巨匠 ジョー スズキ氏
国際的な金融機関での勤務を経て、デザイン・文筆の世界へ。10余年の海外生活経験をもち、その独特の視点には定評が。著書に『名作家具のヒミツ』(エクスナレッジ)等があり。(写真:田中良和)
春の模様替え。現実的に考えた“デザイナーズ日用品”
はじまりのリキクロック 小さくたって百人力
Lemnos[レムノス]
小さな時計
シンプルにして確固たる存在感を備えた名作時計。時間表記を凸で表現しているのが特徴で、陰影までもがデザインとして主張する。スタンド付き。Φ12.2×D7.2cm。各1万1000円(タカタレムノス東京ショールーム)
読みやすさをお洒落に変えた巨匠 渡辺 力
from Japan
Riki Watanabe(1911-2013)
1952年発表の「ヒモイス」が国内外で注目を集め、その後も「トリイスツール」などの名作を数々発表。日本のデザイン黎明期を牽引した。「日比谷の時計」など、時計の名作も数多い。
照明とともに部屋のキャラづけに大きな役割をもつ時計。名作も数多ありますが、引っ越しなどで生活が変わっても使い続けられる、最もコスパに優れる時計といえばコレ一択! 巨匠、渡辺 力氏が手掛けた「小さな時計」です。
ああリキクロックの小さいヤツね、と思うなかれ。じつは本品のオリジンである「小さな壁時計」がデザインされたのは1970年のこと。渡辺氏が手掛けたマスプロダクトの時計はこちらが元祖であり、その点で“はじまりのリキクロック”といえるのです。
「数字が主張しすぎないから針がよく見えるし、カラーが際立つ。小さいけれど奥行きがあり、いい感じの存在感を生んでいる。デザインの力を感じますね」とジョーさんも唸る小さな時計はまた、壁掛けのみならず置いて使うことも可能。生活の変化に柔軟に対応できるヒミツが、ここにあります。
ちなみにフォントは、アメリカの放送局「CBS」のロゴに用いられた“CBS DIDOT”に似た“クラレンドン”というもの。どこか温みを感じる字体も、長年の愛用を後押しするポイントです。
アラビア数字を凹凸で表現。陰影までデザインとして主張
ジョー氏が教える
裏話で語る“デザイナー日用品”3選
①注いだ白ワインが赤ワインに見える、ユーモアのある照明を最新テクノロジーで蘇らせました

Shiro Kuramata(1934-1991)
アンビエンテックのサンバM
クラマタ・ショックの言葉を生むほどシーンに影響を与えた故・倉俣史朗氏の、伝説のグラス型照明(実際にワインも注げる)を復刻。“1988年当時は超高価で20個ほどしか生産されず”を考えると、U-3万円は嬉しい! 充電式。Φ8×H22cm。2万9700円(センプレ)
②2004年にデザインされたものの大量生産する技術がなくお蔵入り……からの復活!

Ettore Sottsass(1917-2007)
カルテルのカリス
オリベッティのタイプライターを手掛けたイタリアデザイン界の雄、エットレ・ソットサスによる樹脂製の花瓶。まさにソットサス節全開!といえる「良質なイタリアンデザイン」をご堪能あれ。Φ30×H48cm。5万1200円(カルテル東京/トーヨーキッチンスタイル)
③廃番後に武蔵野美術大学に収蔵→2022年に復刻するやインスタ映えすると人気に!

Makoto Koizumi
レムノスのケハイ
時針、分針、秒が浮遊するかのように周回する本品は、建築も手掛ける小泉 誠氏の2004年作。廃番となるが2022年に復刻するや「機能一辺倒じゃない物語のあるデザイン」が映えるとブレイク! Φ13×D5.5cm。1万1000円(タカタレムノス東京ショールーム)
※表示価格は税込み
[ビギン2024年4月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。