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3色ペンなのに黒・黒・赤って……お醤油感覚!?

皆さんは「3色ボールペン」と聞いた時に、どのような色の組み合わせを思い浮かべるだろうか。「黒・赤・青」という回答が、最も一般的であると思う。だが、世の中には「黒・黒・赤」という、2種類の「黒」を含む組み合わせの3色ボールペンも存在する。サクラクレパスの「ボールサインiD  3C」だ。

「ボールサインiD 3C」のインキ色の組み合わせには、3つのバリエーションがある。「ピュアブラック・レッド・ブルー」という一般的な「黒・赤・青」の組み合わせもそのうちのひとつだが、残りのふたつは「ナイトブラック・ピュアブラック・レッド」「フォレストブラック・ピュアブラック・レッド」という、「黒・黒・赤」の組み合わせとなっている。なお、「ピュアブラック」はいわゆる普通の黒インキ。「ナイトブラック」は青、「フォレストブラック」は緑のニュアンスが入った黒だ。

もともと、「ボールサインiD」は「黒インキのカラーバリエーションが豊富」という特徴で知られたシリーズだ。通常の黒に加え、緑、青、赤、茶、紫のニュアンスをそれぞれ含んだ、合計6種類の黒インキが用意されている。いずれも、メインの筆記色として使用しても違和感のないトーンでありながら、色による雰囲気の違いもしっかりと感じられる絶妙な仕上がりで人気を博している。今まで単色のみでの展開だったのが、このほど3色ボールペンとして満を持しての登場となった形だ。

初めて「黒インキのカラーバリエーション」と聞いた時は「なぜ?!」と思ったものだが、考えてみれば、今や文房具店の筆記具コーナーにいくと、とんでもない種類の色とりどりのボールペンが並んでいる。でも社会人の立場からすると、素敵だな、使ってみたいなとは思いつつ、学生時代ならいざ知らず、仕事のノートにあまりカラフルなペンを使うのはどうなのか?と躊躇してしまう。人に渡すような書類やメモ書きではなおさらだ。

いろんな色のペンを使ってみたい。でもビジネスパーソンとしての落ち着きも維持したい。ああ、なぜ自分が学生の時になかったのか、この色とりどりのペン達よ……。そんな悩める大人たちのハートをガッチリとわしづかみにしたのが、品がありつつも色のニュアンスによる個性も楽しめるという、ボールサインiDだったのではないだろうか。

今回、3色ボールペンが登場したことで、「自分用のメモにはニュアンスのある黒」「人に渡す書類には普通の黒」「注釈や目立たせたいところには赤」という、仕事でよくある筆記シーンの使い分けが、ペン1本でまかなえるようになった。また私の場合、3色ボールペンの青インキにはほとんど出番がなかったので、使用頻度の高いメインの筆記色が2つに増えるのもありがたいと感じた。

それにしても、黒という色の中でもカラーバリエーションを作って使い分けるとは、日本人の文房具に対するこだわりや解像度の高さには驚嘆するばかりである。

考えてみれば、醤油にもそれに近いものがあるような気がする。関東は濃口醤油、関西はうす口醤油、九州は甘い醤油というのは比較的有名だが、それ以外の地域も北海道は昆布醤油、中部はたまり醤油など、好まれる味には違いがあるらしい。また、刺身は濃口、煮物はうす口など、料理によって使い分けることも多々ある。

日本食に親しみのない外国人にしてみれば「ショーユはショーユで、どれも同じじゃないの?」という感じかもしれないが、各地の醤油文化に育まれてきた人間からすれば、重要な違いなのだ。実際、使う醤油が違えば、同じ料理であっても仕上がりはまったく違うものになる。醤油は和食の根幹をなす調味料だけに、好みや地域性の違いも現れやすいということだろう。

醤油が料理の基本であるように、黒は筆記の基本である。黒の中でも、自分の好みの黒インキが選べるというのは、文化的に大変豊かなことだ、といえるのではないだろうか。

最後に、まったくの余談だが、プロ野球チーム「広島カープ」のグッズには、チームカラーにちなんだ「赤・赤・赤」という“3ボールペン(“1では?というツッコミはさておき)がある。なお、ボール径は1.0mm0.7mm0.5mmとなっているので、太さはお好みで書き分けることができる。どうやら、広島ではカープ愛の強さゆえか、文房具に関しても独自の文化圏を築いているようだ。

 

ボールサインiD 3C(サクラクレパス)

935

https://www.craypas.co.jp/products/ball/001/0141/238512.html

※表示価格は税込み

ヨシムラマリ

ヨシムラマリ

ライター/イラストレーター。神奈川県横浜市出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。元大手文具メーカー社員。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。

文房具(グ)ルメとは? 価格やブランド名だけでは価値が計り知れない、味わい深い文房具の数々。フランス料理店でシャンパングラスを傾ける記念日もあれば、無性にカップ麺が食べたくなる日もありますよね? そんな日常と重ねあわせて、文房具に造詣の深い気鋭のイラストレーターが気になるアイテムとの至福のひとときをご紹介!

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