[1位]今月のいいモノランキング
自然の節や昆虫の痕跡が世界に一脚だけの個性に。アルテックのスツール 60 ヴィッリ
アルテックのスツール 60 ヴィッリ
北欧デザインの巨匠アルヴァ・アアルトが手掛けたアルテック社の名作スツールが、なにゆえ今さら今月のトップネタに!? モノをよく知る読者の皆さんほどそう疑問に感じるかもしれませんが、まずは脚に目を向けてください。微差っちゃ微差なので、気がつくかな、気がつかないかな~。ピンと来た貴兄の目は節穴じゃない!?
「スツール 60」には、フィンランド産のバーチ(白樺)材が使われます。伐採した木材を選抜し、木の成長の過程で生じる節や昆虫が巣くった痕跡などは表に見えないように製脚してきたのがこれまで。こうして名作として愛されること腰掛け90年。節目の年に自社内の美の常識を見直し、自然に生じた木の濃淡を表情として活かした、素顔のままで!な「スツール 60」が登場するんです。言わば素ツール!
大手家具メーカーの木材の選抜基準に一石を投じるこの取り組みは、時代のサステナ意識に即しているというのが第一。聞けば北欧にも忍び寄る気候変動の影響で、バーチ材に住み着く昆虫も活動が活発になっているのだそう。当然その跡を宿さない木材の割合も減りつつあるという現状を、むしろチャンスにも変える妙手になっているんです。で、ビギン的には節や跡の一脚ずつ異なる表情をむしろ味と感じ、そのクラフト感とロマンには諸手を挙げて賛成~!という次第。北欧の森林から届けられる自然の産物をアリのまま、いやいやムシの気の向くまま? 付け加えるなら自然の美しさを形にという点で、建築家でもあった故アアルトの北欧デザインの真髄により近づいた!というのもまたいいじゃないですか。いやはや。従来のプレーンなバージョンと同じ価格にしたという英断にも大賛成! 来る100周年に向けて足場を固めた、ムシできない大変革です。
ありのままの木の濃淡がむしろ味になる!
素ツール 60
曲げ木の技法を用いて一本の無垢材から作られるスツール。スタッキング可能でサイドテーブルとしても活躍するこの名品に、伊のデザインスタジオ、フォルマファンタズマとの協働による新たな木材選定基準ワイルドバーチを導入したモデルが登場する。φ38×H44㎝。3万1900円。
(問)アルテック
☎ 0120-610-599
※表示価格は税込み
[ビギン2024年1月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。