ナイジェルのヘンプキャンバスはもはや芸術だ
ウワサの服 希少予報[素材がヤバい!? 絶滅危惧服]
技術が発達しても、大金を手にしてもいつまでだって同じ服が手に入るとは限りません。いにしえの技法を情熱で現代に蘇らせ、古き良き素材を再現――等々。でも、その手法を何度も繰り返せるかと言えば、不透明なのだ。
生産効率に目をつぶったロマン優先の希少素材
100年の時をかけたファブリック麻布テーラー編とループウィラー編では100年前の技術を甦らせた絶滅危惧服を紹介しましたが、巨匠ナイジェル・ケーボン氏が生み出したるは、ありそうでなかった画期的なレア素材!
ただならぬ風合いを漂わせるこの生地は、なんとヘンプを高密度の平織り=キャンバス地として織り上げたものだとか。強烈なドライタッチで凹凸が生じやすいヘンプ繊維。その糸を味のあるキャンバスに製織できれば持ち味がさらに深まるのは言わずもがな。
一方で伸度がなく切れやすいヘンプを高密度に平織りするのは、歩留まりが著しく低く……。そのリスクを推してまで巨匠が作りたかったのは、40年代仏ミリタリーの妙味。年月を経て程よくヤレたダック生地のニュアンスを、ヘンプキャンバスという変態的な素材で再現しているんです。
その執念たるや! 無論量産は難しく、継続生産される保証はまったくありません!
Nigel Cabourn[ナイジェル・ケーボン]
フレンチアーミー ロジスティクスジャケット
フレンチワークパンツ
仏軍のヴィンテージを下敷きに、テロッとしたドライ感、無骨とリラックスとが同居した類稀なるジャケット。日本人にもフィットするよう微調整され、即こなれた雰囲気に。パンツは後方支援部隊が運用していたものだ。ジャケット各5万2800円、パンツ各5万1700円(アウターリミッツ)
40年代仏軍ウェアがゆるっと日本シルエットに
バトー ドゥ シップスのニット1万9910円(シップス 銀座店)パラブーツの靴9万4600円(パラブーツ青山店)サンディニスタの帽子3960円(トゥー・ステップ)

開発:2022年
生産国:日本
贅沢な粗野感を放つヘンプ100%のキャンバス。伸びないヘンプをテンションの要する高密度に織り上げるのは難しく、糸切れもしやすいため、効率的な生産には全く向いていない。
※表示価格は税込み
[ビギン2023年12月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。