特集・連載
今日から始める美味しい暮らし[ベジカジライフ]
先人の英知が詰まったガーデニングと切っても切れない英国ナイフ
週末農家・坂下史郎のベジカジライフ 「ビジカジ」に始まり、あらゆる分野でカジュアル化が加速する昨今。次のジャンルは?と問われれば、それはズバリ、ガーデニングである! 週末農家・坂下史郎さんが徒然なるままに書き連ねる、ちょっぴり土臭くて小粋なガーデニング放談。 この記事は特集・連載「週末農家・坂下史郎のベジカジライフ」#10です。
週末農家・坂下史郎のベジカジライフ
ケント&ストーのプルーニングナイフ
3、4年前に植えた無花果が、ようやく実をつけるようになってきた。ついに実ったと張り切って、実の一つ一つに紙の袋をかぶせて鳥たちから守っていたら、実りすぎて逆に食べきれない。結局、最初の収穫以降は「鳥様、どうぞご自由にお食べください」ということで、袋もかけずに放置している。
無花果と書いて“いちじく”と読む。当て字でもないこの書き方、由来は花を咲かせずに実を付けるからなのだが、そんな不思議な生態もあって無花果には昔からミステリアスな感情を抱いてしまう。さらに育て始めてから知ったのが、本当は実の中に種のようにある白いウネウネの部分が花なのだということ。
うーむ、さらに不思議だ……と思って調べてみたら、そもそも原生の無花果には、イチジクコバチという無花果と共生する蜂がいるらしい。その蜂が実の中に出入りし受粉する代わりに、イチジクコバチは実の中に産卵し成虫になるまでの栄養をイチジクからもらうのだ。
その後もあれこれ調べていたら、いつも食べている無花果は正確には実ではなく、じつは花嚢(かのう)と呼ばれる花の集合体だとか、無花果にまつわる初耳の知識がゴロゴロ出てきた。
そういった今までの経験にない新しい知識は、自分にとっては庭作りのモチベーションでもある。例えばナイフという言葉で一般的な経験値から導くイメージは、料理に使う包丁や、ランボーが使っているようなサバイバルナイフ、カッターナイフなどがほとんどではなかろうか。
しかし世の中には、農業や園芸の特定の用途に絞った、いわば無花果とイチジクコバチの関係のようなニッチな需要に特化したナイフが多くある。
今回紹介するプルーニングナイフもその一つで、小ぶりな枝の剪定や樹皮を剥いだりするための道具。
>> この続きは9月15日発売の「ビギン11月号」でご覧ください!
ケント&ストーのプルーニングナイフ
17世紀ごろのガーデニングツールの形状を、現代の金属技術でブラッシュアップした剪定(=プルーニング)用ナイフ。クラシックな雰囲気と使いやすさのバランスに定評があるブランドで、ツールごとに品質保証がついているのもうれしい。5年保証。18cm(うち刃長7cm)。3740円(ヴェクスセットジャパン)
①一般的なナイフのように平たく置いたものは切れないが、庭作業ではこの湾曲した刃が抜群に生きる。
②使わないときは折り畳んでしまえるので安心。
③実のところ、現在日本で出回っている品種は蜂の力を借りずに実をつけられるそうだ。そもそも日本にはイチジクコバチがいないらしい。
坂下史郎
さかしたしろう/1970年生まれ。セレクトショップや著名ブランドのMD職を経て独立。2015年から都内と山梨・塩山での二拠点生活を始め、以来毎週末の山暮らしがルーティンに。自身が手掛けるブランドの一つである「迷迭香」には、その趣向を反映させた街⇄アウトドアで活躍する機能服が豊富に揃う。
※表示価格は税込み
[ビギン2023年11月号の記事を再構成]文/坂下史郎 写真/丸益功紀(BOIL)