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昔から、少食というわけではないけれど、食べるのが遅いことがちょっとした悩みだ。家庭環境なのか、あるいは噛む回数が人よりも多いのか、原因はよくわからない。

一人のときならば何の問題もないのだが、人と一緒に食事をするときは、少々気をつかうことがある。給食は自分が食べ終わるまで片付かないから、みんなが遊べない。新入社員のときは営業職に配属され、まわりは食べるのが早い男性ばかり。みんな早々に食べ終わっているのに、自分だけまだ食べている、ということが往々にしてあった。

それで何かイヤミを言われていじめられたり、怒られたりしたことはないけれど、待たせてしまっていることがどうにも申しわけなくて、まだお腹いっぱいではないのに「もう大丈夫です」と言って、食事を途中で切り上げたりしていた。

そんな私にしてみれば、大食いタレントは羨望の的である。信じられないくらい山盛りの料理を、ものすごいスピードでスルスルと口に運んでいく。とても真似できないなぁと思いつつ、あこがれる気持ちもある。

なぜそんな話をしはじめたのかというと、今年の7月に発売されたエポックケミカルの新商品、「ゴツ盛りインクの蛍光ペン」を手にしたからだ。なんだか男子高校生をターゲットにしたカップ焼きそばみたいな名前だが、れっきとした文房具である。

このペンの売りは、なんといってもそのインクの量にある。一般的な蛍光ペンよりも太めの胴軸の中に、たっぷたっぷに入っているのがひと目見ただけでもわかる。その量、実に9.5ミリリットル。これは、エポックケミカルが販売している、従来の蛍光ペンの約6倍だそう。筆記距離も、通常が約80メートルのところ、ゴツ盛りインクの蛍光ペンは約577メートルとケタ違いだ。

そう言われてもピンとこないという方にお伝えすると、高尾山の標高が約599メートルらしい。つまり、このペン1本でそれぐらいの距離が書けるということ。……自分で言っていてなんだが、あまりのすごさにやっぱりピンとこなかった。というか、ペンの筆記距離を山の標高でたとえる日がくるとは思わなかった。

とにかく、筆記距離が長いということは、仕事や勉強で、日々大量に蛍光ペンを消費する人にとっては、実にありがたい話だ。

もうひとつ嬉しいのは、このペンが直液式だということ。一般的な蛍光ペンは、胴軸の中に綿が入っていて、それにインクをしみこませてある。綿にペン芯をさして、そこからしみだしてくるインクを使って書くのだ。これを、中綿式という。

中綿式はインクが漏れにくいといったメリットがあるが、ヘビーユーザーにとっては、ひとつ困ったことがある。連続して筆記すると、書くスピードがインクのしみだしてくるスピードを上回ってしまって、まだインクが残っているのに書けない、という事態が起こるのだ。

まだお腹いっぱいじゃないのに、食べるのが遅くて「もう大丈夫です」と言っていた自分を見るようで、胸がギュッとなる。

その点、ゴツ盛りインクの蛍光ペンは、インクが液体の状態でボディに入っている直液式なので、ペン先へのインクの供給が早いのがメリットだ。ちょっとかすれてきたな、と思ったら、ペン先をクッと12回、軽く押し込めば、あっという間にインクがペン先まで届いて、再びスルスルと書けるようになる。

また、軸が透明なので、インクの残量がわかりやすいのもありがたい。中綿式だと、インクがもう無いのか、それともペン先への供給が追いついていないだけなのか、と迷うことがある。それが直液式なら、見えるインクがなくなれば終わり、と判断がつきやすいのだ。きみはまだ書けるのかい?書けないのかい?どっちなんだい?と悩むストレスからも解放される。

そんなわけで、ゴツ盛りインクの蛍光ペンはまさに、文具界の頼りになるカリスマ大食いタレントだと言えるだろう。カラーバリエーションはイエロー、ピンク、オレンジの3色が用意されている。インクの出が潤沢であるがゆえに、使い方によっては裏抜けや裏うつりに注意が必要だが、日々ガッツリ蛍光ペンを使うお仕事の方は、ぜひ手に取ってみていただきたい。

 

ゴツ盛りインクの蛍光ペン(エポックケミカル)

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https://www.epoch-chemical.jp/original/UTILITY/gotsumori.html

※表示価格は税込み

ヨシムラマリ

ヨシムラマリ

ライター/イラストレーター。神奈川県横浜市出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。元大手文具メーカー社員。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。

文房具(グ)ルメとは? 価格やブランド名だけでは価値が計り知れない、味わい深い文房具の数々。フランス料理店でシャンパングラスを傾ける記念日もあれば、無性にカップ麺が食べたくなる日もありますよね? そんな日常と重ねあわせて、文房具に造詣の深い気鋭のイラストレーターが気になるアイテムとの至福のひとときをご紹介!

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