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要注目!の来春デビュー作は、モンキーブーツがデザインベース

現時点で発売月日も価格も未定ながら、靴好きやトリッカーズ・ファンにとってトピック間違いナシであろうと判断し、早どり情報として、ここにお伝えします。トップ写真をご覧ください。これはトリッカーズ(Tricker’s/1829年、ジョセフ・トリッカーにより創業。所在地:英・ノーサンプトン)の2024年SSデビューモデルのプロトタイプ。一見して「おっ!」と思ったヒト、いらっしゃいますよね? 外羽根がトウキャップ近くまでせり出したデザインから、「コレってモンキーブーツの短靴版では?」と……。聞けば、この新モデル、たしかにモンキーブーツのデザインをベースに開発されたレザーシューズなのだとか。

ここで話をちょいとそらして、革靴ビギナー向けにモンキーブーツについて触れておきますと、そのルーツは米国で発祥した高所作業者向けワークブーツとされております。それはルーファーブーツ(屋根に登って作業する大工用の靴。日本の地下足袋に相当)やラインマンブーツ(送電線や電柱に登って架設や補修などの作業を行う電線工用の靴)のことで、いずれもアウトソールは滑りにくく、引っ掛けが起こりにくい高グリップ性のフラットソール(つま先からかかとまでがひと続きで平坦なソールのこと)であり、また、靴中で足が遊ぶのを防ぐ目的から、シューレースで前足部までしっかり締め付けができる長い外羽根も備わっていました。ちなみに前方に長く延びた、この外羽根は副次的ながら、側面の衝撃から足を保護する役も担ったようです。

こうした高所作業者向けのフットウェアを起源とするのが、いわゆるモンキーブーツです。ちなみに、この珍妙な名称の由来は、高所作業者を木登りが得意な猿に例えたものとの見方が有力ですが、一方、この靴を真正面から見た際、それが猿の顔に見えるからとの説もあります。たしかに、そう言われれば何となくマントヒヒあたりの顔に見えなくもない……かもです。

モンキーブーツの名作「イーサン」が誕生した背景とは?

そんなモンキーブーツの日本初上陸は’80年代末~’90年代初め頃のこと。それはトリッカーズと同様、ノーサンプトンに所在する名門グレンソン(GRENSON/1866年、ウィリアム・グリーン氏により創業)の製品で、インポートしたのはワールド フットウェア ギャラリー(本店:東京都渋谷区神宮前)でした。本格ワーク仕様ではなく、英国靴らしいドレッシーなたたずまいにアレンジされた、そのユニークなブーツは、同店周辺に集まっていたセレクトショップのスタッフらなど、お洒落に敏感な若者たちの間で好評を呼び、モンキーブーツの存在が認知される端緒となりました。

既トリッカーズのアーカイブモデルをベースに、9アイレット(9ホール)から7アイレットに変更し、筒丈をやや低くすることで誕生したジー・エム・ティー企画のモンキーブーツ「M6077 イーサン」。「カントリー」にカテゴライズされるものの木型はやや細身で、ドレスライクな印象がある。写真はコマンドソール採用タイプ。ブラック、マロンアンティークの2色展開。13万2000円。

そのモンキーブーツはグレンソンが一時的に生産したもので、その後も日本に入ってきたとはいえ、それは散発的でした。が、それらのバイイングを手がけた当時、同店のスタッフだった横瀬秀明氏がインポーターのジー・エム・ティー(本社:東京都渋谷区代々木上原)を設立した、その年(1994年)、同社の別注としてトリッカーズに生産をオーダーして誕生したのが、今日、同ブランドの「カントリー」シリーズにおける人気の定番モデルであり、世のカントリーブーツを代表する存在とも目される7アイレット(7ホール)の「M6077 イーサン(ETHAN)」というワケです。

クリケットシューズをベースとするスニーカーフェースシューズ

前置きが長くなってしまいましたが、以下より、トップ写真のモンキー顔シューズに話を戻します。ジー・エム・ティーによれば、この新作はスニーカーフェースシューズと呼ばれるカテゴリーに含まれるタイプだそうです。で、「スニーカーフェースシューズとは?」となるのですが、それは「クリケットシューズを起源とするセミドレスのレザーシューズ」ということになります。

クリケット(英:cricket)とは、1チーム・11人の2チームが攻撃と守備に分かれ、投手がウィケットなる3本の棒にボールをワンバウンドで当てて倒そうとし、打者はそれを阻止すべくバットで打ち返すなどして点を競う球技のことで、野球のルーツなのだそうです。発祥は16世紀初めの英国で、過去には上流階級がたしなむものとされていました。現在、英国、および同国の植民地だった各国でことに人気があって、日本での参加人口は極少でも、全世界の競技人口ではバスケットボール、サッカーについでなんと第3位(!)いう、じつは超メジャースポーツなんです。

ところで、スニーカー(スポーツシューズ)がまだ発展段階にあった1940年代、英国ではそうした製品の多くはスポーツメーカーではなく、革靴メーカーによって生産されていました。このことはクリケット用のシューズも同様で、それらは「スニーカー顔の靴」、すなわちスニーカーフェースシューズと呼ばれるように。そして現在、この名は、そうした往年のクリケットシューズをデザインルーツとするレザーシューズの総称と認識されています。

スニーカー顔シューズにモンキー顔を融合させた新カントリー

ところで、スニーカーフェースシューズは世のスニーカーの多くと同様、トウキャップまで延びた外羽根をもつデザインのレースアップシューズであり、この特徴はモンキーブーツと共通です。おそらくはそうした点を意識してのことでしょう、ジー・エム・ティーの横瀬社長が「M6077 イーサン」をベースに、往年のスニーカーフェースシューズの復刻を試みて出来上がったのが、トップ写真のプロトタイプというワケです。なので、靴好きが「カントリーブーツの短靴版か?」と直感したのもごもっともだったのですね。

旧き佳き時代のスニーカーよろしく、木型は細身ながら丸みに富んだコッペパン的フォルムであり、オールラウンドグッドイヤーウェルト製法ながらも「M6077 イーサン」とは異なってコバの張り出しは極力抑えられ、ソールの構造はダブルではなくシングル。本底がハーフラバー仕様であるなど、カントリー仕様に比して、より軽快でスポーティな印象になっています。しかも、それでいてモンキーブーツ由来の端正でセミドレッシーなデザインとあって、大人の足元に全く違和感のない靴に仕上がっております。なお、トップ写真のプロトタイプは茶系ですが、製品化に及んではブラックのみの展開となる予定です。

昨今、ファッションのコンフォタブル志向はより深まり、ビジネスでもスニーカーOKという風潮です。そんななか、楽チン履きに足が慣れてしまったがゆえに「カントリーブーツは大好物だけど、もっと軽く、もっと気楽に履けるカントリーが欲しい!」という革靴党もいらっしゃるかと思います。となれば、このスニーカーフェースシューズは狙うべき第一候補です。発売は来春以降ということで、いましばらくの我慢は要しますけれど、その日がやって来るまで首を長~くしてお待ちください!

写真はスニーカーフェースシューズの試作品。製品化においては、アッパーはブラックカーフとなり、底前部にラバーが張られた、いわゆるハーフラバー仕様になる予定とか。これらの変更を踏まえたうえで、どんな姿に仕上がるかを想像されたし。発売年月日は現段階(2023年8月)では未定。黙して待つべし。

トリッカーズの
2024年春夏新作モデル スニーカーフェースシューズ

品番&モデル名:未定
製法:グッドイヤーウェルト製法
アッパー素材:カーフ
ソール:ハーフラバー仕様シングルレザーソール
カラー:ブラックのみ
発売時期:未定
価格:未定

問い合わせ先/ジー・エム・ティー ☎03-5453-0033
https://www.gmt-tokyo.com/

※表示価格は税込み


文/山田純貴

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