特集・連載
“通しか知らない”をサクッと学ぶ[10minutes ヴィンテージ]
「ヒールの“Tバック”が目印の’40年代製サービスシューズはモノ好きが別格と讃える一足です」
10minutes VINTAGE ヴィンテージ=難しい? ノンノンノン♪ 通しか知らない名品も、目印を頼ればビギナーでも簡単に発掘できちゃうんです。その道のプロが、目指すべきターゲットと、その判別テクをサクッとレクチャー。10分後はあなたもヴィンテージ通! この記事は特集・連載「10minutes VINTAGE」#13です。
Tバックのサービスシューズ
TEACHER:ガレージセール 店長 青山健一さん
ヴィンテージ市場には、いつの時代も需要が途切れないド定番銘柄が存在します。ジーンズならリーバイス501。スウェットならチャンピオンのリバースウィーブ。そして、靴ならこの米海軍のサービスシューズ!
理由は単純明快。見た目がとことんベーシックだから。青山さん曰く、「軍とか軍務という意味を持つ“サービス”という言葉に由来した通称なんですが、正式名称は“ドレス・オックスフォード”。つまり、戦場ではなく式典など折り目正しく装うときのために作られた靴なんです。だから見た目がごくごくシンプル。なのにほんのり無骨な雰囲気もある。服好きからの人気が長らく途切れない名靴ですね」。
1940~2000年代まで米国海軍で支給されていたサービスシューズ。半世紀以上の歴史を持つだけあって時代によって細部の仕様が変更されているが、「通の間でもっとも人気が高いのはヒールに“Tバック”と呼ばれる補強革を備えた、最初期の’40年代製シューズです。この頃の製品は仕立ても凄く丁寧。ウエストがギュンとくびれていてフィット感も抜群!」
「後年には目印のTバックもくびれもなくなってしまうので、通が血眼になって探し求めてるんです。見つけたら即買い、が鉄則ですね」
USネイビードレス・オックスフォードシューズ
カジュアル/キレイめ、どちらにも振れる傑作、通称サービスシューズ。こちらは米国の某世界的シューメーカーA社が“OLD COLONY SHOE CO.”名義で製作していたといわれる超絶希少品。それだけにくびれ具合もハンパなし! しかも奇跡のミントコンディションだ。1944年製。4万円(サファリ1号店)
違いがひと目でわかる
サービスシューズ意匠印象比較
歴史の長い名品だけに、年代によって仕様変更が行われている。希少な’40年代製品と、市場でよく目にする’80年代製品をさくっと比較♪
ヒール
左/[’40年代製]Tバック 右/[’80年代製]ドッグイヤー
ご覧の通り’40年代製にはT字状の補強革(通称Tバック)が。’50年代以降からはすべて右写真のドッグイヤー仕様に簡略化される。
ラスト
左/[’40年代製]くびれ 右/[’80年代製]ぽってり
’40年代製はウエストがグイッとくびれてシャープな印象なのに対して、’80年代製はくびれが控えめになって、ぽってり寸胴になる。
アイレットの飾りステッチ
上/[’40年代製]あり 下/[’80年代製]なし
Tバックと同様、年代判別の目安になるのがこのステッチ。’60年代まではステッチが施されているが、’70年代以降は省略される。
アイレットの数
左/[’40年代製]6つ 右/[’80年代製]5つ
一部例外があるものの、一般的に6アイレット=’60年代以前のレアものと思ってよし。’70年代以降は5アイレットに統一される。
’80sモデルも要Check!!
’40年代製に比べると流通数は多いものの、年々タマ数が減ってきた’80年代製。飾りステッチ等も省略され、ミニマル好きにはこっちも人気高し。1万6900円(ガレージセール)
ガレージセール 店長
青山健一さん
ヴィンテージシューズの品揃えに定評のある千葉県津田沼の名店のボス。細かな仕様変更にも精通し、年代の判別術も伝授してくれる。
[ビギン2020年04月号の記事を再構成]写真/上野 敦(プルミエジュアン) 文/黒澤正人