特集・連載
「1000万円する時計の隣でも引け目を感じない美しいデザイン」アレッシィ
センスがエグい腕時計ガイド ビギンは考えました。センスがいい人は、腕時計選びの背景にも光るものがあるはずだ。時計との巡りあわせは、時にその人の生き様までも垣間見えるのです。だからこそ、えげつないセンスを感じさせる愛機の選び方を知りたい! 時計は、持ち主の味(センス)が現れるものだから。 この記事は特集・連載「センスがエグい腕時計ガイド」#37です。
デザインプロデューサー/文筆家 ジョースズキさんの俺的名作時計
【アレッシィ】モメント
バブルの余韻がまだ残る頃、滅多に運転しないのに粋がって分不相応な高い車に乗っていました。それが窃盗団に盗まれ、ほどなくダライ・ラマの法話を聞く機会があって。そこで勘違いしていたことに気付き、これからは本当に必要で、シンプルでいいものだけを吟味しようというマインドになったんです。
建築家のアルド・ロッシがデザインしたこの時計を買ったのは33年前。車が盗まれる数年前のことです。小ぶりで手首の細い僕にちょうど良いサイズのうえ、時刻が分かりやすく美しい意匠に一目ぼれでした。
腕時計はリューズが手の甲に当たるのが嫌だったんですが、これは12時位置にリューズがあり、リューズを含めた時計本体をフレームでカバーする独特のデザイン。しかも付属のチェーン付きフレームと替えると懐中時計になる。そんな実用性も気に入っています。
じつは20年ほど前、あるコンサートに懐中時計としてつけていったら、チェーンの先が切れて失くなっていて。他の選択肢は考えられず、同じ時計をすぐに買い直しました。だから外側フレームは2セットあり、ひとつは黒ベルト、もう一つは赤ベルトをつけて、装いに合わせて付け替えています。
僕のファッションは、黒、白、赤、グレーをカラースキームにしていますから、これで上手く対応できちゃう。いわばこの時計はミニマリストと呼ばれることの多い、僕の生き方そのもの。これからもずっと自身の象徴として大事にしたいです。
アレッシィ
モメント
高名なイタリア人建築家にしてプロダクトデザイナー、アルド・ロッシのデザイン。同じ文字盤デザインの壁掛け時計は有名だが、腕時計はレア。時計本体を、同梱のチェーン付きフレームにはめ替えると懐中時計として使用可能だ。SS製でムーブメントはクォーツ。
デザインプロデューサー/文筆家
ジョースズキさん
デザイン・建築・アート分野を中心に、イベント開催や執筆活動を行う。YouTubeチャンネル「東京上手 TOKYO JOE’S」も好評。
[おいしい時計選びの極意]自分の生き方と照らし合わせて吟味
[ビギン2023年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。