ビームス 中村達也さんの俺的名作時計
【グランドセイコー】セカンドモデルと【キングセイコー】KSK
家内の実家が時計店を営んでいたのですが、2014年に義父が亡くなり、閉業することになりました。そこで「もう捨てようと思うんだけど」と、見せてもらったのが古い時計のストック。
クォーツショック以降、お客さんがクォーツ時計を購入し、それまで使っていて壊れた機械式時計を「捨ててくれ」と、置いていく方が多かったそうで。ただ義父は「いずれは機械式時計のパーツがなくなってしまうかもしれない」と、置いていかれた時計を修理用のパーツとしてストックしていたそうです。
そのなかで見つけたのが、グランドセイコーの67年製セカンドモデルと、キングセイコーの66年製“KSK”。どちらも外装も文字盤もキレイな状態で、これは思わぬ掘り出し物かも! と、期待したところ、GSの方がリューズ抜けしていて動かなかったんですよ。
そこでダメもとでセイコーに修理に出すと、しっかり直って戻ってきた。しかも「現代のモデルとは精度が異なりますが」、という一筆が添えられて。これには職人さんの心意気を感じましたね。
それ以来、GSのセカンドモデルはとくに気に入って愛用しています。極めてシンプルなデザインに、太めの堂々としたラグがいい。海外でも「その時計いいね。どこのアンティーク?」と、あまり見ない雰囲気らしく、非常に評判がいいんですよ。
義父の廃棄寸前のストックから見つけ出した国産時計が、海外で褒められる。日本人として、とても誇らしく思います。
(左)グランドセイコー セカンドモデル
(右)キングセイコー KSK
ファーストモデルから4年後の、1964年に製造が始まったグランドセイコーのセカンドモデル。セイコー独自の日付表示機能、セルフデーターが加わり、裏蓋はスクリューバックを採用して50m防水を実現。ラグを太く設計して耐久性が高く、高級感と実用性を兼ね備えた名作だ。1967年製は優秀級クロノメーターよりも厳しいGS規格。
キングセイコーは1975年に生産終了となるものの、アンティーク市場で人気が高く、近年は復刻にてレギュラー化された。中村さん所有の個体はともに茶色の革ベルトに替えられ、茶靴や茶色のジャケットとのコーディネートにベストマッチだそう。
ビームス エグゼクティブクリエイティブ ディレクター
中村達也さん
ご存知、ドレスクロージングの賢人。「時計はムーブメントのウンチクよりルックス。自社製ムーブメントにはこだわりません」
[おいしい時計選びの極意]中身は二の次。デザイン&見た目が大事!
[ビギン2023年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。