特集・連載
今日から始める美味しい暮らし[ベジカジライフ]
ブーツラバーの自分に不足なしの軍用ラバーブーツ
週末農家・坂下史郎のベジカジライフ 「ビジカジ」に始まり、あらゆる分野でカジュアル化が加速する昨今。次のジャンルは?と問われれば、それはズバリ、ガーデニングである! 週末農家・坂下史郎さんが徒然なるままに書き連ねる、ちょっぴり土臭くて小粋なガーデニング放談。 この記事は特集・連載「週末農家・坂下史郎のベジカジライフ」#05です。
週末農家・坂下史郎のベジカジライフ
スウェーデン軍のM-90ラバーブーツ
暖かくなるにつれ、木々の枝に新芽がぷっくりとしてきた。うちの庭でも、寒さに打ち勝った強い草花から順に土の中から顔を出し始める。ここ数年は野山のような天然感を目指し、植えていない植物が生えても極力放置している。そのおかげか草花も伸び伸びと、小さな庭世界の中で自分たちのテリトリーを形成しているようだ。
そんな庭の片隅に、早春から賑わうフキノトウのナワバリがある。これまた植えた記憶が全くないのだが、周りの草花がまだ目覚める前からひょこひょこと芽を出し始める。時期を逃すと苦くて食べられないため、ちょっとだけ開いた絶妙なタイミングで収穫し、サッと洗って天麩羅にすることが多い。天然ものは苦味が強く、春を感じさせる青々しい風味が、毎年この時期恒例の楽しみになっている。
そんなフキノトウよろしく、山暮らしの玄関やガレージで徐々にテリトリーを拡大している道具がある。山にいる間は一番長く共にいると言っても過言ではない、泥汚れと雨が似合うラバーブーツやワークブーツだ。
昔から釣りをやっていたので、用途ごとに色々な丈やソールのブーツを持ってはいるが、今一番愛用しているのはスウェーデン軍のサープラス・ラバーブーツ。カナダのケベック州で創業したアクトンというラバーブーツメーカーによって作られたもので、スウェーデン軍なのになぜカナダ製?と当初疑問に感じたが、これが驚くほど丈夫でヘタらず、底のすり減りもほとんどない。この質実剛健さが、スウェーデン軍に好まれた所以なのだろう。
そしてミリタリーサープラスの魅力は、なんといってもクオリティの高さと低価格である。巷には「ヴィンテージ」というだけで高値がつき、名品と呼ばれたり手に入りにくいものが多いが、自分はそういうものにあまり興味がない。
それよりも、低価格で簡単に手に入るサープラス品から、そのものの本質的な機能やデザインをじっくりと目利きして、将来の名品を発掘するのが好きなのだ。それにやっぱり「ミリタリーサープラス」という響きには、男心を掴んで離さない唯一無二のロマンがある。
最後にもう一つ。このブーツ、普通のお洒落ブーツと違い足首あたりのくびれがほとんどないのだ。コレの何が良いって、外家の行き来で脱ぎ履きが大変しやすく、思い切りキックするだけで抜けて飛んでいく。さて、山の季節はこれから夏に向かう。喉カラカラで倒れそうになる猛暑日の土いじりは、こいつをスポッと飛ばして、すぐさま冷蔵庫でキンキンに冷えたビールにありつくとしよう(笑)。
スウェーデン軍のM-90ラバーブーツ
過酷な冬を過ごすスウェーデン軍のために作られた、カナダ製の完全防水ラバーブーツ。後ろの紐を絞ることで履き口を調整でき、ゴツい見た目に反して履き心地はすこぶる良い。アウトソールも安定感があり、ぬかるんだ野山の道もへっちゃらだ。1万450円(ワイパー)
①かれこれ5~6年の付き合いになるが、未だにちっともすり減らない。この調子でいくと、自分の寿命とブーツの寿命どちらが長いのだろうか?
②スウェーデン軍の象徴でもある3つの王冠。下の数字はサイズで異なる。
③これからフキに育ってくれれば、今度はおひたしとしても楽しめる。
フキノトウ(PETASITES JAPONICUS)
●キク科フキ属
●全長:4~6cm
●生態:多年草
●原産地:日本
[一口メモ]フキもフキノトウもどちらも旨いが、微量ながら毒性があるため食べ過ぎにはご注意を。
今回のひと皿
フキ味噌
いつもなら天麩羅だが、今回はフキ味噌にしてみた。フライパンに油を引き、細かくミジン切りしたフキノトウを炒める。しんなりしてきたら味噌、料理酒、砂糖で作った味噌だれを投入し、弱火で3~4分馴染ませたら完成。素朴で最高な、春のご飯のお供だ。
坂下史郎
さかしたしろう/1970年生まれ。セレクトショップや著名ブランドのMD職を経て独立。2015年から都内と山梨・塩山での二拠点生活を始め、以来毎週末の山暮らしがルーティンに。自身が手掛けるブランドの一つである「迷迭香」には、その趣向を反映させた街⇄アウトドアで活躍する機能服が豊富に揃う。
※表示価格は税込み
[ビギン2023年6号の記事を再構成]文/坂下史郎 写真/丸益功紀(BOIL)