革製品の世界で、その名をよく耳にする名タンナー。が、「どこがどうスゴイの?」ということで、ビギンが今までに訪れた世界の6社について学び、その真価を実感しましょう!
世界の名タンナー6社
①ホーウィン(アメリカ/Since1905)
アメリカのコードバン文化を現在に伝える、大いなる名門
シカゴにて設立。かつて米国では多くのタンナーがコードバンを生産していたが、1970年代までに全て撤退。唯一残ったのが同社で、その際に経営を支援したのがオールデンだ。以来、両社は固い絆で結ばれている。
その「シェルコードバン」は良質で、独特の光沢と深い味わいのある比類なき高級素材。また、オイルドレザー「クロムエクセル」(牛革のものと馬革のものがある)もアウトドアブーツなどの素材として著名だ。
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Alden[オールデン]
990
オールデン伝統の「バリーラスト」が採用された名靴「990」。縫製箇所が少ない構造で面積の大きい革を使う必要があるがゆえ、コードバンの中でも最も美しい“大トロ”的箇所を切り出して使うんだとか。13万8600円(ラコタハウス青山店)
②新喜皮革(日本/Since1951)
世界でも高く評価される良質コードバンを供給する実力派
国内有数の皮革生産地、兵庫県姫路市の馬革(コードバン&ホースハイド)タンナー。コードバンをタンニンなめしで製造できるタンナーは、国内ではここだけ!
日本では伝統的にランドセル素材だったコードバンの生産を堅持し、近年はその品質が海外でも高く評価されている。
2017年には、馬革同様に食の副産物として完全養殖の近大鮪マグロ革と琵琶湖のブラックバス革の生産・供給をスタートさせ、これも大いに話題に。
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THE WARMTHCRAFTS MANUFACTURE
[ジ・ウォームスクラフツ マニュファクチャー(TWCM)]
コードバン製ジップコンパクト財布
滑らかな手触りと透明感のある美しい発色が特徴的な、ブランドオリジナルカラーのコードバン仕様。コンパクトながらも札・小銭・カードを分けて収納可、充分な機能性だ。W10.6×H8.5cm。5万600円(TWCM BANKS)
③栃木レザー(日本/Since1937)
革の繊維深くまでなめされてできあがるヌメ革は、革通をうならせるハイクオリティ
ヌメ革とはフルベジタブルタンニンレザーのことだが、現在、国産ヌメ革のタンナーで最も著名なのがコチラだ。
チェスナットやオーク、ミモザなどの樹皮から抽出したタンニンの溶剤に満たされた槽に原皮を長期間浸して深くなめす、いわゆるピットなめしを堅持。
この古典的製革法で仕上がる革は上質な風合いやしなやかさに富み、品質の高さゆえに、革質に強いこだわりを持つレザーブランドから熱く支持されている。
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THE SUPERIOR LABOR[ザ シュペリオールレイバー]
ジップロングウォレット
繊維の詰まった部分のみをなめした、キメの細かい特注レザーを採用。縫製は自社職人が操る足踏みミシンによるもので、その均等な縫い目や糸の閉まり具合は一級品。W20×H10.5cm。3万7400円(ビギンマーケット)
④チャールズ・F・ステッド(英国/Since1904)
極上起毛革はノーサンプトンの靴メーカーもこぞって御用達
スエードなどの起毛革を生産するタンナーの中でも名高く、供給先は世界有数のブランドやメーカーばかりで、ノーサンプトンの名門靴メーカーも名を連ねる。
それらの革は起毛のグラデーションが美しく繊細で、しなやかだがコシがあり、発色性や耐久性に優れている。
自社内に大量のドラム染色機や新色開発のための研究室を設けたり、色ブレがあるものは出荷直前でも容赦なく除外したりするなど、色への圧倒的なこだわりを貫いている。
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Clarks[クラークス]
デザートブーツ
1950年に誕生したカジュアルシューズの先駆者。また、ステッド社製スエード×クレープソール×ステッチダウン製法がもたらすやさしい履き心地から、コンフォートシューズの原点とも評される名靴。2万5300円(クラークスジャパン)
⑤J&F.J.ベイカー(英国/Since1862)
オークバークを使ってなめされた革はしなやかにして、耐久性に富んでいる
19世紀半ばから存在する超老舗で、英国南西部コリトンにて古典的なピットなめしを今に継いでいる。
同社のそれはオークバーク(樫の樹皮)から抽出したタンニンエキスで満たした槽に原皮を浸し、1年半を費やして深くなめすというもので、これによってしなやかで耐久性のある革に仕上がる。
同社の代表である、100%天然材料の蜜ロウを丹念に塗り込んだブライドルレザーは、これ以上ないほどに美しい艶で知られる。
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WILD SWANS[ワイルドスワンズ]
フルグレインブライドル PALM V2
ブランド大定番のミニ財布「PALM」を、全ての日本紙幣がスムーズに出し入れできるようにアレンジした進化版。待望のフルグレインブライドルレザーモデルが登場。W10×H8.6cm。3万9600円(ケイズファクトリー)
⑥モンタナ(イタリア/Since1975)
ダニボブの定番革は手絞りでシワ付けされているのだ!
多くのタンナーが集まるトスカーナ州ピサ県サンタクローチェ地区に所在するタンニンレザーのタンナーで、ダニエル&ボブを象徴する「ローディー」は両社の協業で生まれたレザーだ。濡らした革を3人がかりで絞り、2日間乾燥。さらに広げて、2日間乾燥させることで独特のシワ感を表現している。また、2回にわたる手染めで醸し出された色ムラも、この革の個性。
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Daniel&Bob[ダニエル&ボブ]
ジャスミン
ブランドを代表する、肩掛け×斜め掛け×手提げの3wayモデル。’20AWにPCポケット増設などの改良も図られている。革はもちろん「ローディー」。W35×H34×D14cm。全5色。8万9100円(ダニエル&ボブ ジャパン)
解説してくれた革の第一人者
いいでしょ!
ライター 山田純貴さん
1992年にビギンでの編集&執筆を開始。革に関する体系的資料があまり存在していない時代から、綿密な取材によってわかりやす~い革のコンテンツを数多く作成してきた。通称「革博士」。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。