目指すところは、ファッションとしてのギアを超えたギア
世界のファッションシーンに影響を与える“TOKYO”を牽引してきた4ブランドのデザイナーにインタビュー。毎冬登場する魅力的なアウターの中でも、ブランドの真髄が凝縮された“伝説の一着”とは?
ゴアテックス ダウンジャケット




最新のゴアテックスにダウンを組み合わせた一着。フロント、袖に計16のポケットが付いており、収納力ハンパなし。微妙に色合いが異なるブラックのグラデーションも秀逸。12万円。(問)ホワイトマウンテニアリング
フェイクじゃない機能こそがカッコいい
じつはゴアテックスを使用できる“ファッションブランド”は数少ない。厳しい基準があるためだ。’06年のデビュー当時からこの素材を使用しているホワイトマウンテニアリングがレアケースなのだ。
「単なるファッションではない、ギア的なモノ作りが認められたのだと思います。ただし、ハイスペックだけを求めているのではなく、原点はクラシック。例えばバブアーのインターナショナルジャケットのような、機能的かつデザイン的にも優れたウェアが理想です」と言うのは、相澤陽介さん。ファッションとアウトドアの融合を果たした草分け的存在だ。素材やスペックまでリアルを追求する姿勢はデビュー当時から変わらない。
「フェイクじゃない機能を有することこそが、ブランドのアイデンティティ。今季は特にオーバープロテクション、つまり“過剰な装備”がテーマ。例えばこのゴアテックスダウンは計16のポケットを付けていますが、それが機能でもあり、デザインでもあるんです」
デザイナー自身で製品の“実地試験”を行うことも多く、本作は厳冬のマッターホルンの麓で行った撮影の旅にも同行したという。
「例えば空港や都市部での荷物の収納性、旅先での使い勝手も確かめました。マイナス20℃の屋外でも問題なく過ごせたし、ロケの際もバッグが要らないほどでした」
アルプスの寒さにも耐える骨太スペックに、マットなブラック一色で表現したグラデーションも秀逸。本作もまた伝説となる予感!
もっと深く知るための用語解説
言わずと知れた防水透湿素材。ホワイトマウンテニアリングではこの素材をファッションに融合させたアウターを毎シーズン展開している。右は’13AWコレクションからの一葉。
相澤さんはかつてバブアーの「ビーコンヘリテージレンジ」のデザイナーも担当。リスペクトする一着は、フロントポケットが特徴のインターナショナルジャケット。
スイスとイタリアの国境にあるアルプス山脈の名峰。相澤さんは真冬に麓の町ツェルマットを訪れ、サンプルのゴアテックスダウンを同行。道中でポケットの使い勝手をテストしたり、-20℃の屋外でのロケに着用。他のアイテムも実際にスノーボードなどで試すことが多いという。
WhiteMountaineering デザイナー
相澤 陽介さん
1977年生まれ。コム・デ・ギャルソンを経て、2006年ブランド設立。“服を着るフィールドはすべてアウトドア”をテーマに服作りを行う。現在はハンティング ワールドのクリエイティブディレクターも兼任している。
※表示価格は税抜き
[ビギン2018年1月号の記事を再構成]
写真/竹内一将、中田昌孝(STUH) 大志摩 徹 三浦伸一 吉岡教雄 武蔵俊介 久保田彩子 文/秦 大輔 押条良太(押条事務所) 礒村真介 桐田政隆 宮嶋将良(POW-DER) トロピカル松村