’80年代MA-1が持つ飾り気のないギア感こそ最高にグラマラスだ
世界のファッションシーンに影響を与える“TOKYO”を牽引してきた4ブランドのデザイナーにインタビュー。毎冬登場する魅力的なアウターの中でも、ブランドの真髄が凝縮された“伝説の一着”とは?
N.ハリウッド × アルファ インダストリーズ リバーシブルMA-1




ミリタリーライン、N.ハリウッド エクスチェンジサービスのMA-1。ここ数年は「アルファ」社とのコラボモデルを展開している。最新作は、黒無地のナイロンツイルとカモフラ柄のコットンツイルのリバーシブル。4万2000円。(問)ミスターハリウッド
本気スペックを踏襲しつつ’80年代の空気感まで表現
博覧強記のヴィンテージ知識を持つ尾花大輔さんが、数あるミリタリーアウターの中でも特にデザインソースとして重要視するのが、MA-1タイプのブルゾン。ここ数年は、名門「アルファ」社との協業モデルを展開している。
「MA-1は、10代の頃から身近にあった思い入れのあるアイテム。年代ごとに形や作りも変遷していますが、とりわけ’80年代のMA-1特有のシルエットはグラマラス。ディテールも簡素化されており、そのシンプルさがどの年代と比べても一番美しい。今回の別注モデルもベースは’80年代です」
シルエットやディテールは当時のものを踏襲。ミリタリーの表層を捉えるのではなく、独自のミルスペックを設定し、「実際に米軍が使える」レベルを目指しつつも、今季の新作でこだわったのは、パーソナルなリメイク感だという。
「すでに軍人だけでなく、一般人も着始めていた’80年代当時のMA-1にはよく持ち主がセルフカスタムした痕跡が見られます。例えば無理やりポケットを追加したり、好きなバンドのワッペンを貼ったり、自由にアレンジを楽しんでいる。当時のカルチャーや空気感まで取り入れたかったんです」
今季はリバーシブル仕様の変わり種を展開。片面は、尾花さんが「最もスマート」という黒の無地。もう片面は、色褪せた風合いを加工で表現したカモ柄ボディにハンドウォーマーを“無理やり”追加している。これこそ、尾花さんの感性が凝縮された一着なのだ。
もっと深く知るための用語解説
1949年頃に登場した米軍のフライトジャケット「MA-1」。その後時代とともにアップデートされていく。’80年代のモデルは、現行と比べてゆったりとしたシルエットが特徴。また、狭いコクピット内で引っ掛かることがないよう、ディテールも必要最低限に簡素化されていた。
2009年春夏に始動したミリタリーライン、N.ハリウッド エクスチェンジサービスでは「米軍で実際に使える」クオリティを目指し、独自の規格を設定している。本物同様、細かな製造情報までタグに記載。
アメリカらしいDIYなリメイクは、古着のMA-1にもよく見られる。下はパンクバンドなどのワッペンが貼られた’80年代のMA-1。写真は尾花さん私物。
N.HOOLYWOOD
デザイナー
尾花 大輔さん
1974年生まれ。古着バイヤーを経て、2000年「ミスターハリウッド」オープン。翌年、ブランドスタート。2007年、パリで展示会を開催し、世界へ進出。2011年からはコレクションの場をNYに移し、国内外から注目を集めている。
※表示価格は税抜き
[ビギン2018年1月号の記事を再構成]
写真/竹内一将、中田昌孝(STUH) 大志摩 徹 三浦伸一 吉岡教雄 武蔵俊介 久保田彩子 文/秦 大輔 押条良太(押条事務所) 礒村真介 桐田政隆 宮嶋将良(POW-DER) トロピカル松村)