ラグビー新リーグ「リーグワン」が熱い! マッケンジー、松田力也らのワールドクラスのパフォーマンスは必見
今年1月の歴史的開幕からひと月以上が経過した、日本が世界に誇るラグビー新リーグ「ジャパンラグビー リーグワン」(以下、リーグワン)。毎節熱戦が繰り広げられている一方で、新型コロナウイルスの感染が一部チーム、選手の間で確認され試合登録選手が足りなくなるケースが続出し、最上位カテゴリーの12チームによるディビジョン1は第5節終了時点で30試合中9試合がやむなく中止となった。
開催中止が相次いだことでリーグ自体の不成立が懸念されたものの、ディビジョンごとに予定試合数の50%以上が開催されれば成立となる決定がこのほど下された。ディビジョン1は前述のとおり中止の比率が30%、ディビジョン2は中止なし(全9試合開催)。ディビジョン3は44%(9試合中4試合中止)とやや不安が残るが、ディビジョン1は第5節にして初めて全6試合が開催され、大会成立に向けて前向きな材料が揃ってきた。
感染拡大などの面が悪目立ちしてしまっていたリーグワンだが、肝心な試合内容、各チーム、各選手の高いパフォーマンスは当然ながら目を見張るものがあり、国内のみならず世界からも視線を集めている。試合登録選手の未充足の責任を負うチームは不戦敗扱いで勝ち点0と21失点、逆に不戦勝となったチームに勝ち点5と21得点が付与されるルールとなっているため現在の順位表はチーム間の力関係を正確に表しているとは言い難いが、やはり上位には強みを存分に発揮しているチームが集中している。
1位をひた走るのは昨季(トップリーグ)準優勝の東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)だ。ニュージーランド代表「オールブラックス」の現役メンバーのダミアン・マッケンジーはフルバックとして持ち味の鋭いランを披露しつつプレースキッカーとして得点を重ねており、東京SGが長年標榜するアグレッシブアタッキングラグビーを体現している。日本代表の副将にしてサンゴリアス主将のセンター中村亮土やスクラムハーフ流大と齋藤直人、オーストラリア代表で東京五輪にはセブンズ(7人制)オーストラリア代表として出場したセンターのサム・ケレビといったインターナショナルプレーヤーが、期待に違わぬ活躍で唯一無敗(5勝0敗)の快進撃を支えている。

2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下、S東京ベイ)、3位のトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)もワールドクラスのプレーヤーと、生え抜き選手が見事なパフォーマンスを見せている。S東京ベイはフッカーのマルコム・マークス、トヨタVはフランカーのピーターステフ・デュトイとフルバックのウィリー・ルルーと、世界ランキング1位の南アフリカ代表に欠かせないトップ選手がいずれもキーマンとなっており、プレーオフトーナメント進出の権利が与えられる4強入りを目指すうえで原動力となるだろう。もちろんピーター・ラピース・ラブスカフニ(S東京ベイ)、姫野和樹(トヨタV)といった日本代表勢の献身的な活躍も見逃せない。

リーチ マイケル、ワーナー・ディアンズらが所属する4位の東芝ブレイブルーパス東京の今後も楽しみだが、やはり見逃せないのはその下に位置する昨季王者、埼玉パナソニックワイルドナイツだろう。新型コロナウイルス陽性の選手が確認されたことで開幕戦、第2節は中止となり勝ち点を得られなかったが、第3節以降は横浜キヤノンイーグルス(以下、横浜E)、コベルコ神戸スティーラーズ(以下、神戸S)、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安(以下、SA浦安)に勝利し、3連勝で勝ち点14。第5節終了時点で5位と開幕当初の出遅れを取り戻しつつある。日本代表スタンドオフ松田力也、オーストラリア代表ウイングのマリカ・コロインベテといった「役者」がきっちり仕事しており、今後も本領を発揮し続けて徐々に順位を押し上げていきそうだ。
6位の横浜E(勝ち点14)、7位のリコーブラックラムズ東京(同12)、8位の神戸S(同11)はいずれも大事な試合を落とし中位にとどまっているが、パフォーマンスが安定すれば十分浮上は可能だろう。第4節、ブラックラムズ東京は東京SGに勝利目前まで迫り、最後は逆転負けを喫したものの(●33-36)確かな爪痕を残した。中位のチームの「上位食い」が起きれば、今後の順位争いはさらに熾烈を極めるはずだ。
9位のNECグリーンロケッツ東葛、開幕から3試合連続中止の影響が尾を引く10位の静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)、11位のSA浦安、唯一全敗(0勝5敗)で最下位のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪は苦しい戦いが続いているが、SA浦安は開幕戦で神戸Sに競り勝ち、静岡BRはチームが始動した第4節で1勝を挙げている。どのチームも巻き返しに期待だ。
日々パフォーマンスを上げていくと同時に、新型コロナウイルスの感染にも細心の注意を払い続けるという難題を両立していかなければならない各チームの努力には頭が下がる思いだ。全国的に寒い冬が続いているが、リーグワンの観戦を楽しむ数多くのファンの熱は今後も上がる一方だろう。
齋藤龍太郎
《ワールドワイドにラグビーを取材中》
編集者として『ラグビー魂』をはじめとするムックや書籍を企画。2015年にフリーの編集者兼ライターとなり、トップリーグをはじめ日本代表の国内外のテストマッチ、ラグビーワールドカップを現地取材。フォトグラファーとしても活動。著書に『オールブラックス・プライド』(東邦出版)。
文・撮影/齋藤龍太郎(楕円銀河)