特集・連載
1995~2000年:モードとスニーカーの融合
近年注目度が高まっている「C級スニーカー」永井ミキジさん的BEST5
傑作スニーカーの超現代ヒストリー '90s~2010年代編 1900年代から始めるのがスニーカー史のセオリーですが、今回は雑誌ビギン創刊の1988年を起点に超現代をフィーチャー! この記事は特集・連載「傑作スニーカーの超現代ヒストリー ’90s~2010年代編」#07です。
モードとは真逆!?だけど……’90年代の手の届くA級欠番!
C級スニーカーBEST5
ひと言でいえば、マイナースニーカーのこと。C級スニーカーコレクター、永井さんが命名したもので、近年注目度が高まっている。
エアマックスを筆頭に、誰もがプレミアモデルを血眼で探していた’90年代。その一方で、ひたすらマイナーなスニーカーを買い続けていたのが、C級スニーカーコレクターとしても話題を呼んでいる永井ミキジさんです。
「僕が10代だった’90年代前半は古着ブームで、フランス製のアディダスとかメジャーなヴィンテージスニーカーが人気でした。でも10代の僕にそれらは高額で、いつも違う選択肢を探していました。そんな時、日本に生産工場ができたばかりだったパトリックとか、無理なく手の届く、それでいて珍しい自分だけの一足を履く喜びに開眼。マイナースニーカーばかりを買うようになりましたね」
そこで今回’90年代に購入した、思い出深~いC級スニーカーベスト5足を披露してもらいました。
「まずは、トラサルディかな……。ファッションに目覚め出した高校生時代、誰の影響も受けずに選びとったつもりでいたトラサルディのスニーカーをいたく気に入っていたんです。今になって思えば’80年代のイタカジブームに影響されてたんでしょうけど。そんな淡い思い出を忘れないよう、’90年代に改めて同年代のモデルを探して見つけたのがコレです」
学生の頃愛用した絶妙ないなたさが◎

TRUSSARDI[トラサルディ]
trussardi sport
「高校時代にいたく気に入って履いてた、伊の老舗ブランド。当時はタツノオトシゴと思ってたアッパーのマークは、大人になって狩猟犬だと知りました(笑)」(永井さん)
C級スニーカー収集のルーツは高校生時代まで遡るんですね……。
「そんな高校生時代に高嶺の花だったのがケイパ。まず靴紐が二つに分かれるダブルレースのデザインが特徴で、サイドのダブルデルタロゴは別売りのカラーパーツと付け替えができるんですよ。斬新でおもしろいんですけど、知らないうちにパーツが取れてなくしてしまうのも当時のあるあるですね」
着せ替えできるロゴがイイんです

KAEPA[ケイパ]
Unkown
「レースアップの靴紐が2つに分かれている、ダブルレースシステムも変わってましたね~。デルタピースはグミみたいな綺麗なカラーもあってかわいいです」(永井さん)
さらにこちらも大人には懐かしいエルエーギア。ありましたね~。
「LA発のブランドで、じつはマイケル・ジャクソンとのコラボモデルが有名だったりします。ハイカットのフィットネスシューズが多いんですが、このローカットのランシューはかなり珍しいです」
M·J愛用ブランドのローカットはレア

L.A.GEAR[エルエーギア]
Unkown
「’90年にはナイキ、リーボックに次ぐ全米第3 位のスポーツブランド。NBA選手とも契約してハイカットが多いなか、ランシューってのが刺さりました!」(永井さん)
4足目はなんとパタゴニア!?
「一見するとシンプルなキャンバススニーカー。でも見慣れたこのタグがシュータンについているのを見たときはこんなの出してたんだ!と驚きましたね」
パタにキャンバススニーカーって!?

PATAGONIA[パタゴニア]
スタンドアップ・スニーカー
「’90s後半頃に数年だけ販売されたスニーカー。名品スタンドアップ・ショーツと同じ、丈夫なオーガニックコットン100%のキャンバスを使ってました」(永井さん)
そしてモノ好きにはたまらないのが、エーグルが仏軍に供給したトレーニングシューズです。
「これは一般流通していないレアなモデル。若い頃ミリタリー系は神戸の軍モノショップ、イカリヤでよく買ってました。最近ではスロバキア工場製のミリタリースニーカーが復刻されたりして人気です」
軍用の機能美にホレました

AIGLE[エーグル]
MILITALY
「’80sにエーグルが仏軍に卸していたヴァルカナイズドスニーカー。シンプルな作りで今でも状態よく残っています。パイルのインソールもお気に入り」(永井さん)
最後に、今狙い目’90年代C級スニーカーを聞いてみると……。
「スケーターの間で流行った定番モデルじゃなくて、コンバースのオールスターみたいなデザインのエアウォークが逆に良い。定番モデルじゃないから4000円くらいで買えました。ただ最近は欲しがる人が増えてきて、市場価値が上がってしまわないかと複雑なところです(笑)」
永井ミキジさん
「無理せず手の届くレアスニーカーを探すのが楽しいんです。」
本職はグラフィックデザイナー。集めたマイナースニーカーは数知れず、自身のコレクションをまとめた『C級スニーカーコレクション』(グラフィック社刊)が発売中。
おせっかいな解説
●パトリック
フランスのシューズブランド。1990年に日本に工場を開設。日本でも本格的に人気が広まっていった。
●イタカジ
’80年代に大ブームとなったイタリアン・カジュアルの略称。短めのすそ丈デニムなどが人気を博した。
●ダブルレース
ケイパの創設者がテニスのプレイ中に紐が切れ、二重構造としたところ動きやすかった逸話が起源。
●マイケル・ジャクソンとのコラボモデル
ビリー・ジーンやバッドなど、マイケルのヒット曲を冠したシグネチャーモデルを発売していた。
●イカリヤ
神戸の進駐軍払い下げの軍服やデニムを扱い、1956年に創業。レアな掘り出し物が見つかることも。
●スロバキア工場製
スロバキアは’30年代からの欧州最大級の製靴拠点。有名ブランドや軍用靴のOEM生産でも知られる。
●エアウォーク
コチラは最近になってミキジさんが購入されたエアウォークのスニーカー。定番のスエードのスケシューとは異なり、コンバースのオールスターに似た形や、ドットの総柄デザインがお気に入りポイントだそうだ。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年2月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。