特集・連載
今季トレンドのビビッドカラーも豊作!! インバーアランのニットカーディガン
モノすごい機能で選ぶ冬の服 昨今進化が止まらない「モノすごい機能服」たちは、その性能を考えると冬を待たずに、“売り切れ→後悔”コースの逸材ばかり。「防寒」はもとより、「防止透湿」「発熱」「拡張」「伸縮」さらには、「抗菌」まで。時代の進化&人々の要望の中で爆誕しまくる最新鋭の機能服を、わかりやすく解説します♪ この記事は特集・連載「モノすごい機能で選ぶ冬の服」#15です。
何百年も前から伝わる伝統着は、その時代には最新の機能服だった! 防寒性に秀でたニットといえば……
先人の知恵 が今に生きる[伝承]機能服
海風から身を護る漁師由来の機能服
立体的なケーブル模様で知られる、英国発祥のアランニット。ある文献によると、その模様のパターンには1000年以上前から伝わるものも。「防寒のため、野太い羊の毛を編み上げたニット」は、何百年どころかサウザンドイヤー級の機能服なんです。
中世になると、伝統的なアランニットのパターンは地方ごとの特色が出てきます。なかでもスコットランド東部とイングランドではヨコ編みが主で、それぞれの漁村ごとのパターンに発展。
19世紀後半に入ると、スコットランド東部の漁師の妻たちが、船乗りの防寒着であるガンジーニットにその漁村特有のケーブルパターンを装飾して編み始めました。これらのニットは未脱脂の羊毛が用いられ、防水防風性に富み、男たちを荒ぶる北海から護っていたのです。
1975年創業のインバーアランは、この伝承に基づくニットを、優れたニッター(おばあちゃんね)の内職による工芸品的にマーケットへと送り届けたもの。
手編みゆえ仕上がりのブレが大きく、ひとつとして同じものはなし。でも今日の機能服ではNGとされるその不均一さにこそ、代え難い温もりが宿るのです。現在ハンドメイドからマシンメイドに変更されたものの、見た目にほっこり暖かいという点は立派な機能と思うわけ。
今季はトレンドのビビッドカラーものも豊作。そもそも漁師が着ていたガンジーニットは、今日定番と見なされている生成りの白でなく、汚れの目立ちにくい紺に染色されていたといいます。カラフルなインバーアランって、一周回っていろいろと正統なんですね!
INVERALLAN[インバーアラン]
ニットカーディガン
現在は価格高騰を避けるため、ニッティングはインドにて。紡績・染色と、ウッドボタンなどの最終工程はスコットランドで行う。上/3Aをベースにした別注モデル。6万8200円(ビショップ) 中・下/3Aと呼ばれる定番の色別注。各5万7200円(シップス)

生命の木の模様は、その名の通り家族繁栄の祈りを込めたとされる。ハニーカムは子孫繁栄を、ダイヤは魚網、すなわち富や成功の象徴。漁師の縄や命綱を表すケーブルは大漁や安全を祈願するものだ。
[今どきアレンジポイント]
ビビッドなカラーが今季のトレンドですね
シップス バイヤー 岡部邦彦さん
ダークなトーンに落ち着いてしまいがちな冬だからこそ、インバーアランの存在感をトレンドのビビッドカラーで取り入れてみては。そんな意図から、カラフルアランを別注しました!
※表示価格は税込み
[ビギン2021年12月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。