革のプロ・ハシモト産業から学ぶ、令和こそレザーが必要だ![読本]
国産皮革三傑の品格を改めてじっくり学ぼう
日本の名タンナーは知れば絶対誇りたくなる!
【皮革をかく語りき】ハシモト産業 社長 橋本信一さん
「欧米諸国にとって“革”は、日本でいう“お米”。正直歴史の長さも関わりの深さも敵いません」
橋本さんは、そうして日本は革の後進国であると認めつつも、同時にまだまだ世界で勝負できる!という可能性も感じているそう。
「だから正直言って、すべての国産皮革が世界で通用するとは思っていません。しかし世界中の革に触れてきた身として、当社が懇意にさせていただいているこのタンナー3社に関しては、贔屓目なしで世界基準だと断言できます」
そう橋本さんが心底惚れた込んだこの3つのタンナーには、それぞれ唯一無二の個性=世界の名タンナーに負けない強みがあるそうで、
「まずは栃木レザー。ここは近代化とともに失われた昔ながらの非効率的な製法を、頑なにずっと守り続けているタンナーさん。そもそも未だに100以上のピット槽(※①)を所有しているタンナーなんてそうそうない。一般的な革の何十倍もの時間をかけ、丹精込めてなめされたタンニン革(※②)は、革本来の風合いと優れた堅牢性が両立した、最高品質の革だと思います」。
「次に新喜皮革。そもそも馬革を扱うタンナー自体がとても少ないなか、とくに希少性の高いコードバンをタンニンなめしで製造できるタンナーは、国内ではここだけ! 世界でも数えるほどしかありません。コードバンとは馬の尻部分の中に潜んでいる繊維層のこと。これをなめすためには表面を削る作業が必要になるのですが、その技術力は間違いなく世界屈指です」。
「最後にキモト・レザーワークス。ここはズバリ、クロムなめし(※③)のスペシャリストです。とくになめした後の、表面を平らに、滑らか〜に仕上げる技術力はまさに世界でも指折り! 難しい色目の安定性もピカイチですし、革製品職人たちの間でファンが多いのも納得です」。
橋本さんがリスペクトするこの3つのタンナーは、いずれも自ら原皮を集め、独自のノウハウをもとになめし、細心の注意を払って仕上げている、骨太な名門ばかり。
「こういう実直なタンナーさんの存在は、日本人として誇らしく思えるのではないでしょうか」
①ピット槽/タンニンなめし(※下参照)の際に、タンニンを入れておく容器のこと。ピット槽を使ってなめす手法はヒジョ~~~~~~に手間がかかるため、今では世界的にも希少。
②タンニン革/植物の樹皮や幹などから抽出される“タンニン”を使用してなめされた革のこと。コシが強く、日光や手の脂などで色や風合いが経年変化=エイジングするのが特徴。
③クロムなめし/“塩基性硫酸クロム”という薬品を使用するなめし法。伸縮&発色性と引き裂き強度にも優れる革に仕上げられるのが特徴。大量生産向きでコストカットにも繋がる。
ハシモト産業 社長 橋本信一さん
1973年、大阪府で革テープ作りからスタート。タンナーとメーカー双方と密な関係を構築し、革の卸売業に携わりながら、革製品の製造販売から他社のOEMまでを請け負う。まさに革のAtoZを熟知した、超スペシャリスト!
栃木レザー
「効率を度外視した“ピットなめし”で最高のエイジングが楽しめます」
100字でわかる栃木レザー
1937年創業。洗い、脱毛、なめし、乾燥、染色、仕上げと、あらゆる工程を数百年前から変わらない、超非効率な手法で完遂する技巧派。社名がそのまま高品質レザーの代名詞として浸透している、世界的タンナーだ。
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HUKURO[フクロ]
包んで守る手帳&ブックカバー(右)
手帳型iPhoneケース(中)
ハンガーブレスレット(左)
右/ビジネス書にジャストなB6サイズ用。ペンホルダー等も完備している。W15×H20.8×D2.5cm。1万3200円。中/iPhone7/8/SE用ケース。W8.8×H16.5×D1.7cm。左/テーブルなどに引っ掛ければバッグハンガーに早変わりするブレス。4950円。8250円。(問)栃木レザーアンテナショップ ☎ 0282-21-7501



新喜皮革
「国産コードバンを語るうえで絶対に欠かせません」
100字でわかる新喜皮革
革の名産地、兵庫県姫路市で1951年に創業した日本を代表するタンナー。馬革をフルタンニンなめしで仕上げられるのは国内ではここだけ。10か月以上もの時間をかけて作られるコードバンは、世界最高峰の品質を誇る。
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The Warmthcrafts Manufacture
[ジ・ウォームスクラフツ マニュファクチャー]
オイルコードバン製ブリーフケース(右)
オイルコードバン製コンパクト財布(中)
オイルコードバン製三折キーケース(左)
コードバン製品作りに長ける人気ブランドから。どれもベーシック顔だからこそ、コードバン特有の色艶を存分に堪能できる。右/W44×H31.5×D8cm。44万円。中/W9×H9.6×D1cm。3万8500円。左/W10.5×H5.4×D2cm。2万4200円。(問)ジ・ウォームスクラフツ マニュファクチャー BANKS ☎ 06-4256-8588



キモト・レザーワークス
「仕上げへのコダワリが最高品質を保証している」
100字でわかるキモト・レザーワークス
美しい艶こそ正義!とされる婦人靴用の革作りで名を馳せる、兵庫県たつの市の実力派タンナー。アニリン染色やアイロン加工をはじめ、クロムなめし後の仕上げにも注力した、美しくてしなやかな革は、熱狂的な信者多数。
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NEKONOTE[ねこのて]
巾着バッグ
クロム革特有のしなやか~な革質は、シワ感が命となる巾着にもジャスト。同タンナーは革の素の風合いを生かす水性仕上げにも長けているから、味わい深い表情に。参考商品。
VR技術を駆使した斬新すぎる展示会の模様は、上から誰でも簡単にアクセス可能。リアルな革の迫力、質感を体感できるのは感動もん!
実際にレザーと触れ合える東京レザーフェア開催!
12月1日(水)〜2日(木)の2日間、東京の都立産業貿易センター 台東館にて、日本最大級の革見本市“東京レザーフェア”が開催。革に萌えたいモノ好きには絶好のチャンス。
総合問い合わせ先/ハシモト産業
☎ 06-6771-6911
オフィシャルサイト https://hashimotoindustry.com/
オンラインショップ https://hashimotoindustry-fukuoka.myshopify.com/
う
※表示価格は税込み
写真/上野 敦(プルミエジュアン) 文/黒澤正人 イラスト/TOMOYA