Mar 26, 2021

【ナイジェル・ケーボン初!?】まさかの“ビジネス可”なカーゴスラックス誕生のウラ側

ビギンマーケット限定企画としてこのたび誕生した、ナイジェル・ケーボンのカーゴスラックスこと「ウール版ブリティッシュアーミーパンツ」。これが何ともシビれる出来栄えでして。超手前味噌にはなりますが、超素晴らしい！と超自負しておりますゆえ、ぜひ一人でも多くの方にお伝えしたい！ということで、メインラインのチーフデザイナーであり、ナイジェル氏の右腕として活躍するZUKIさんに、ビギンマーケット担当サトミが改めてお話をうかがいました。

と、その前にスペシャルな動画を。なんと英国在住のナイジェル・ケーボンご本人からビデオメッセージをいただきました（感涙）！　当初は「直筆メッセージとか……」と恐る恐るリクエストしてみたのですが、ビギン本誌でもたびたびご登場いただいているご縁もあり、なんとビデオでのメッセージが実現したというわけなんですね～。

ナイジェル御大からのメッセージ！

いや～、ビギン愛を感じるコメント、率直に嬉しいですよね。御大、本当にありがとうございました！

さて、閑話休題。今回ZUKIさんに伺ったお話は、本誌やサイトだけでは伝えきれなかった、細か～いエピソードも含んでいます。これぞナイジェル・ケーボン！とも言うべき、服飾知識と愛にあふれたこだわり満載の一品であることがおわかりいただけると思いますので、ぜひ余すところなくご覧くださいませ！

※本商品は、5月中旬まで中目黒の「Nigel Cabourn THE ARMY GYM FLAGSHIP STORE」にサンプルを置かせてもらっていますので、触れてみたい、試着してみたいという方はぜひ。ただし購入はビギンマーケットでのみになりますのでご了承ください。

＞＞＞商品サイトはこちら

今回のキーマンはこの人！

ナイジェル・ケーボン
メインラインチーフデザイナー
ZUKIさん

ヴィンテージの知識はもちろん、ブランドの肝であるテキスタイルにも精通。15年以上にわたり、ナイジェル本人の右腕としてブランドを支え続けている。

トクベツな原料、トクベツな糸、そして
トクベツな生地のトクベツすぎる一本！

これが渾身の別注パンツ！

ベースは、もともとブランドでも定番品として展開している「ブリティッシュアーミーパンツ」。それを“ビジネスでも穿けるように”という発想で、生地やらディテールやらを練りに練ってアレンジしていただきました！

編集部サトミ（以下サトミ）：ここ数年、本当にビジネス服のカジュアル化が進んでいますよね。今回は、ナイジェルさんで何かそういったアイテムができると意外性もあって面白いと思ったんです。

ZUKIさん（以下敬称略）：実は相談いただいたのがとてもいいタイミングだったんです。今進行中の2022年の春夏企画では、1940～1950年代のイギリス国民が着用していた（ドレス）クロージングに着目し、それらを現代に見合った衣服となるように再構築の設計をしている最中でした。今回の別注企画はその走りとなる、ある意味では実験的に先行したアイテムとも言えると思います。

「チェビオット」という羊の毛を使っているんです

とにかく生地がすごくイイ！（編集部サトミ）

程よい強度もあり、しなやかさもあり

手触りや近くで見た印象としては、適度に強度のある無骨な生地。一方でしなやかさも併せ持っており、エレガントな印象も与える非常にユニークな素材です。

サトミ：それにしてもご提案いただいた「チェビオットウール」の生地には驚きました。無骨ではあるんですけど、絶妙にスラックス然とした品よいタッチも併せ持っているんですよね。

ZUKI：チェビオット羊毛は流通のほとんどが紡毛紡績による太番手のものが主流です。ファブリックとしてはブリティッシュ・ツイードなどが代表的なものとなります。

サトミ：本来はガサっとした肉厚な生地に用いられる糸なんですね。

ZUKI：しかし、今回の生地はチェビオット100%の梳毛紡績によるもので、原料の中でもファーストカット（＝生まれて初めての散髪）の毛のみで構成されています。

この素材との出会いが本作最大のポイントでした

“生まれて初めての散髪”ってめっちゃ柔らかそう！

サトミ：通常はガサっとした紡毛しか撚れないのに、ファーストカットの原毛を使用することで、スーツに使われるようなツルっとコシのある梳毛紡績が可能になる、と。

ZUKI：そうですね。子どもの原毛は繊度が細く、かつ繊維長が長いんです。よって梳毛紡績が可能となり、さらに28番手という世界的にも稀なヘビースペシャルな糸となっています。この素材に巡り合えたことが、今回一番のキーポイントと言っていいかもしれません。

サトミ：おお！　やはりかなりスペシャルな糸なんですね。スペシャルな原毛がスペシャルな糸になり、さらにはスペシャルな生地が生まれた、と。実際、間近で見たり触ったりすると、「なんだこの生地！（驚）」ってなりますもんね。一方で、ビジネスにも対応できるということで、この「ブリティッシュアーミーパンツ」を採用した狙いもきっとあるんですよね？

ミリタリーの無骨さとエレガントさを併せ持つ

少し離れてみた印象はいわゆるスラックスのそれ。きれいなドレープからも生地のしなやかさがよくわかります。

ZUKI：はい。まず本作は、1940年代英国のバトルドレスパンツと1960年代の（アフリカ）ローデシア軍のバトルドレスの折衷デザインになっています。ポイントは、軍パンながらマチ付き大容量のカーゴポケットのディテールがないこと。機能的で簡素化されたアシンメトリーなマチ無しポケットを有するデザインが、今回のコンセプトに合致すると考えました。

サトミ：確かに大きなマチ付きポケットがあると、途端にミリタリー感が強まる気がします。

ZUKI：そうなんです。さらに、本来はピストルベルト用とされていたベルトループの向きを逆にしてよりベルトループとして使いやすくしたり、裾のタブはシルエット改良したことにより不要になったため取り除いたりしています。また、ベルト裏の仕様は1940年代のオフィサーパンツの仕立てを分析・採用しており、元となるデザインはファティーグパンツの域でしたが、オフィサー（将校）パンツの域まで引き上げ、価値転換を図りました。