馬具作りの技術が詰め込まれた、使い込んでも美しく丈夫なピエニのレザートート
“故”を極めるがゆえに辿り着く“新”
馬具メーカーにて学んだ技術をファッションとして昇華するPIENI。なにも奇抜なことをするのではなく、技術を最大限生かし基本を極める。そこに加わる少々のファッションスパイス。温故知新の“故”を大切にするからこそ辿り着く“新”は、この先何十年も残るのであろう。
「馬具の意匠がミニマルを形作るレザーバッグ」
―ピエニ デザイナー ABUさん・談
革を熟知するからこそのあえてのハイブリッド
このトートは2018年の立ち上げと同時に発表したもので、今やブランドの顔となっています。表はPVC、内側はピッグレザーというPIENIの代名詞“素材の設計”を表現したシリーズ。
馬具作りで培った視点、着眼点をはじめ、経年変化、さまざまなシーンを想定して設計したもの。結果、普通とは逆の組み合わせのレザーバッグが完成しましたが、ここには長年馬具メーカーで培った技術を存分に詰め込んでいます。
馬具とは「命を守る道具」。だからこそ、より堅牢でなくてはいけません。それには革の潜在能力を最大限引き出すこと。この鞄の特徴は“一本縫製”。つまり一方の肩口からもう一方の肩口まで、一本の縫製ラインをグルリと走らせて箱型を形成しています。
このときに意識することは、素材をいじめず、歪みなどのストレスを与えないこと。そうして素材の持つハリを活かすことで、自然に生まれるのがマチのカーブです。これをシリーズ名の由来“Kaari(カーリ)”と呼んでいます。これにより立体成形が実現し、使い込んでも美しい形を維持できるようになるんです。
左/表(PVC) 右/内側(ピッグレザー)
表にPVCを使ったのは、革との相性もありますがファッション的スパイス。張り感をもたせた設計が、上品さを演出し、それがミニマルな意匠に載ることで、モダンな雰囲気を醸してくれるんです。
さらに雨に強く、メンテも楽。素材の堅牢度、馬具作りの設計技術、革の仕上げ方、使用シーンを想定したデザイン、日本の技術力など、詰め込んだものは使えば使うほど堪能できるはず。
革素材の持つ役割を追求し、そこを軸に設計するのがピエニ。何十年も使って、再度よさを実感してもらえるように。ブランドとしても基盤となってくれるような“ファン”を作っていきたいですね。
PIENI[ピエニ]
TOTE L
カーブでマチを形成した「カーリ」シリーズの定番トート。一本縫製ならではのミニマルデザインは服飾業界でも評判で、女性からの人気も高いモデルだ。表PVC×内ピッグレザーによるボディは長く使っても型崩れせず、いつまでもパリッと美しい状態をキープ。ハンドルはカウレザーを採用。W32.5×H37.6×D10cm。605g。2万7000円。(自然堂)
(PIENI/ピエニ)


PIENI デザイナー
ABUさん
日本で唯一の馬具メーカーで技術を学ぶ。その後、セレクトショップなどのレザーバッグの製作に携わり、PIENIをスタートさせる。
レコードバッグをイメージ。薄マチデザインの新作
「カーリ」シリーズの新作「ミュージッキS」は、レコードバッグをイメージ。両サイドにジップを配することで、荷物の出し入れをスムーズにする。新しくモダンな雰囲気に加え、使いやすい設計も魅力。W31.5×H40×D8cm。774g。2万円。(1LDK apartments.)
※表示価格は税抜き
[ビギン2020年11月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。