特集・連載
THEストリートアイコン「江川芳文」が考えるストリートと“大人コドモ”【令和の今!アラフォー世代が着たい“ストリートな服”】
令和の今!アラフォー世代が着たい“ストリートな服” この記事は特集・連載「令和の今!アラフォー世代が着たい“ストリートな服”」#07です。
裏原宿全盛期から20年以上が経った今も、江川芳文さんを敬愛する人は変わらず多い。10代でプロスケーターになったという稀有な来歴や、カルト的人気を誇るブランドやショップをつくり上げたという実績ももちろんその一因。でも、最大の理由はきっと彼のアティテュードにあるはず。多くの大人が年とともに頭がカタくなり、過去に築いたものを守るのに躍起になる中で、江川さんが向いているのは、いつだって前だけ。今も昔もユースが憧れる“YOPPIさん”、その魅力の根源に迫ります!
フォーエバー! ストリートアイコン
江川芳文a.k.a.“YOPPI”に訊く今昔ストリートinterview
About Yoshifumi Egawa & Hombre Nino
オンブレ・ニーニョ ディレクター
江川芳文
1972年生まれ、東京都出身。スケートボードに出会って数年後の15歳でスポンサードされ、プロスケーターとなる。22歳のときに自身がディレクションするショップ、ヘクティクをオープンし、その後同名で展開し始めたオリジナルブランドは瞬く間に裏原宿シーンきっての注目株となる。その後、惜しまれつつブランドは休止するが、2012年にはデザイナーの関正史さんとともにオンブレ・ニーニョを立ち上げ、幅広い世代に向けたスタイルの提案を今日まで続けている。現在はXLARGEのデザインと協業企画、PLUS L by XLARGEのディレクションも兼任。オンブレ・ニーニョでは東京の気鋭クルー、ディアスポラスケートボードとのコラボレーションシリーズが先頃発売されたばかり。
「結局スケートボードからですね、始まりは」
江川芳文(以下江川):いえいえ。でも、色んなところでそういうお話をさせていただいてきて、最近になって思うんですよね。僕にとってのストリートって、以心伝心っていう言葉に尽きるなぁ、って。
江川:はい。僕で言うとストリートの原体験って、大瀧さん(T-19創設者の故・大瀧ひろしさん)たちがやっていることに憧れを抱いて、彼らみたいな人がいるところに僕も行きたい、その空気感を味わいたいと思ったことだったんです。そこから広がっていって、大瀧さんの周りにはスケシンさん(SK8THINGさん)とか、T-19のメンバーの先輩たちがいたりして。その中で、例えばスケシンさんを通して(藤原)ヒロシさんに出会ったりもしました。そういう人同士の空気感みたいなものを大事にしながら、この先輩たちはどんなことを考えているのかって妄想したり、後輩ながら一緒の空気を吸ったりっていう毎日を今までずっと続けてきて。結局スケートボードからですね、始まりは。
江川:でも、結局ずっと変わらないんですよね。昔の僕みたいなスケーターの子供を、なんの構えもなく遊びに誘ってくれたあの頃と。だから、例えばヒロシさんが世界的にも知られる存在になったからって、関係性は昔と同じです。ストリートって色んな側面がある中で、僕はそういう繋がりにずっと憧れてたし、今もベースはそこなんです。そういう風にして自分の中のストリート観とか街の定義みたいなものができていくんじゃないでしょうか。
江川:今もスケートボードをしながら、それとものづくりとをバランスよくライフスタイルにしていくのが僕の中ではストリートカルチャーのあり方で。どっちに偏りすぎてもダメなんです。ヘクティク時代は仕事ばっかりして、スケートボードから離れてた時期もありますけど、やっぱりシーンを追っていくのは大事なこと。人それぞれだとは思うけど、忙しいときには「スケートしたいけどできないから、ユーチューブでスラッシャー観よう……!」みたいに、マインドの部分では追っていけると思うんです。
江川:そうですね。でも僕にとっては極端すぎて、ちょっと絵空事に見えちゃうかなぁ。今、僕が子供だったとしても、そういうのに憧れるのかな?って思いますね。
「息子はスケートボード背負ってピストバイクで駒沢公園に行ってます(笑)」
江川:スケートボードって年齢は関係ないんだなぁ、ってことですね。子供たちがスケートボードの練習をしてるのを見つつ、自分でも今も滑ってるけど、僕は48歳で衰える時期じゃないですか。そこに悔しさはあるけど、それがすごくいいんですよ。できないことが、できなくなっちゃったことがすごい楽しくて。
江川:そう、一緒なんです。“またできない”“また怖くなってる”っていうのが楽しい。「昔はできたのに……」とか、そういう風に考える人も多いと思うし、僕自身にもこういう感覚は複雑怪奇なんですけど(笑)。「今はできなくなっちゃったけど、それでもいいや。またやってみよう」っていう折り合いを自分の中でつけて、そこを正直に子供に見せられたら、一皮剝けるんじゃないかなぁ。そんなことをここ1、2年は考えながら、もう一度体を絞ってみようかな?とか思ってます。子供って体力がハンパじゃないから。息子は今小学6年生なんですけど、ピストバイクに乗って、スケートボード背負って駒沢公園に行ってます。僕よりも社会性があって、ちゃんと敬語とか使ってますね(笑)。
江川:この20年とかで子供たちもどんどん上手くなってレベルが上がってきてるから、僕ができなくなってることは本当に恥ずかしいんですけど、上の世代のことなんて知ったこっちゃないって子ばっかりなので、面白いんですよ。長くやってるからってもてはやされることもないし、そこにあるのは滑りたいか滑りたくないか、そのイエスかノーかだけ。ずっと言い続けてますね、「スケートボードがないと僕はおかしくなる」って。
「スケートボードを取り巻く全部が好き」
江川:いや、単に忙しすぎただけですね。最近も色んな人からヘクティクの話をされるくらいだから、たぶんその頃は頑張ってたんだと思います(笑)。買い付けから始まって、だんだん「買いたいものがない」って自分で思い込むようになって、自分で新しくつくるようになって。
江川:ヘクティクは22歳で始めてるので、一番スケートボードに乗るべき年齢でしたよね。でも、これは今も言ってることなんですが、ただ“乗るのが好き”っていうスケーターもいれば、“スケートボードを取り巻くものすべてが好き”という人もいると思うんです。僕はそのすべてが好きで、例えばスケートボードしてる女の子のファッションも気になるし、子供と大人とでできる輪も好き。22歳の頃からそんなメンタルだったから、当時遊びたい盛りだった同世代とはちょっと見方も違ったかもしれません。
江川:いえ、そもそもスケートーボードで食って行こうと思ったことは一回もないです(笑)。なんていうか、スポーツ選手になりたくなかったんですよ。アスリートの人たちには10代から今までずっと「まだスケートボードやってんの?」とかって言われてきたから、そのたび「この野郎……!」って思ってました(笑)。ずっと子供扱いですよ。だから、今の自分のブランドにオンブレ・ニーニョ、“大人コドモ”って意味の名前をつけたんです。
「一番調子に乗っていたのは、10代で初めてアメリカに行ったとき」
江川:今の子たちって、みんな意外とそこはクールなんですよね。僕が一番調子に乗っていたのは、10代で初めてアメリカに行って帰ってきたときですね。成田に着いたときにはもうオラオラでした(笑)。うちの子供も少し前に初めてアメリカに連れてったんですけど、帰ってきたときはやっぱりオラオラしてました(笑)。相当衝撃的だったんでしょうね、ニューヨークが。
江川:やっぱり楽しいですよね。僕もデンマークとかアムステルダムとか、そっちのほうはまだあんまり行ったことがなくて。ポーラー(スウェーデンのデッキブランド、ポーラースケートカンパニー)の所とか、行ってみたいなぁ。
江川:そうなんです。最近自分がちょっと衰えてるから、息子から影響を受けようかなって。
江川:はい(笑)。ただ、自分の格好もずっと変わってないんですけどね。ずっとディッキーズを穿いてるし、リーバイスも穿いてる。変わったことといえば、そこに合わせる自分のつくった洋服くらいです。あとは格好いい先輩たちのやってるブランドを着るくらい。そう言えばこの前、子供にディッキーズを勧めたんですよ。「スケーターはみんな穿いてて、擦れても滅多に破けないから」って、ちょっとドヤ顔で。そしたら息子が1日で膝に穴開けて帰ってきました(笑)。「あれ? 穴空いちゃった。結構弱いね」なんて言って(笑)。
江川:人のカスタムみたいな部分を見たらアガりますもんね、やっぱり。僕もすぐにスニーカーとか、カスタムしちゃうから。すぐにナイキのスウッシュ外したり、アディダスの3本線、外したり。ニューバランスのNを取ったときはすごく格好悪くなっちゃって、やっちまったなと思いました(笑)。
江川:そうですね。僕もクラークスに散々色を塗りました(笑)。ベージュに赤を載せると、オレンジになるんですよ。元々はウータン(・クラン)がやってたアイデアなんですけど。
「若い子から教えてもらうことも多いし、いくつになってもポーザーです(笑)」
江川:それは言い合いっこなしだと思いますよ。自分も元はポーザーだったと思うし、なんなら48歳になってまたポーザーに逆戻りです(笑)。若い子に影響されて、ものを作ってみたりとか。だから、結局そういうことなんだと思います。ポーザーありき。ポーザー、最高だと思いますよ。わからない部分は若い子からどんどん教えてもらえばいいんですよ。「なるほど、そこかぁ」って。そういう意味でも、大人コドモっていうネーミングはちょうど良かったですね。
【NEW ARRIVAL①】
最近の気分は、ズバリ“サメ”
アシンメトリーなグラフィックと、背中には傾斜したフォトプリントを配したロンTはゆったりとしたサイズ感。デザインはDJ/プロデューサーユニットのMU-STAR GROUPに所属する上山悠二さんが手掛けている。「なぜか今、“サメだね”って周りの人と話すことが多くて(笑)。あんまり見ないモチーフだったからか、そういう意味でも面白いのかなと思います」(江川さん)。各9000円。
【NEW ARRIVAL②】
少し大人に寄せるなら、コレが最適
堅牢なコーデュラコットンを採用した、ファンクショナルなテーラード。「やっぱりこういう服って、袖を通した瞬間に気持ちがビシッとするじゃないですか。それがいいなと思って、Tシャツの上に1枚で着るイメージでつくりました。涼しくて夏でもOKだし、イージーパンツなのでそのままスケートボードにも行けますよ」(江川さん)。ジャケット4万2000円、パンツ2万6000円。


【NEW ARRIVAL③】
レトロとモダンが入り混じる、コラボ作
チェック柄のフリースジャケットは、継続しているコロナ(THE CORONA UTILITY)とのコラボレーション最新作。「この柄は’90年代に活動していたディゲブルプラネッツっていう、ジャズとヒップホップの要素を取り入れたグループがあったんですけど、彼らがイメージソースです。かなり変わったディテールでコロナにつくってもらいました」(江川さん)。4万8000円。


【NEW ARRIVAL④】
開けて、着て。2度新鮮なパックT
フルーツオブザルームに別注した、2枚パックのクルーネックT。袖口にネーム、裾にイニシャル刺繍が入ったシンプルなデザインだ。さらに、裾がラウンドになっているのが面白い。シャツに合わせたデザインで、実際に着て重ねると収まりのよさを実感できる。「せっかく裾をラウンドにしてるのにパックに入っているから気付かれない。巷のパックT論争にナナメから切り込んだアイテムです(笑)」(江川さん)。6000円。
【商品のお問い合わせ先】
オンブレ・ニーニョ http://www.hombrenino.com
※価格は税抜き表示
写真/宮前一喜 文/今野 壘