特集・連載
世界初!? バナナデニムって何!?
JAPAN BLUE JEANS[ジャパンブルージーンズ]の教科書 この記事は特集・連載「JAPAN BLUE JEANS[ジャパンブルージーンズ]の教科書」#09です。
品種改良がほとんどされておらず、栽培&収穫方法も原始的なコートジボワールコットンを生産の現場からサポートしたり、製造の過程で排出される汚染水を80%減らしたりと、「世界一エシカルなジーンズ」を目指し、挑戦を続けるジャパンブルージーンズ。本格的な取り組みが3年目を迎えたこの秋、ついに新しい生地が完成に漕ぎつけたとの情報をキャッチし、ディレクターの岸本裕樹さんにお話を伺いました。利用価値のなかった収穫後のバナナの木。それを活用した世界初のデニムとは…?
ジャパンブルージーンズ ディレクター
岸本裕樹さん
エシカルシリーズの発起人であり、エシカルなデニム作りのため世界各国を奔走する敏腕ディレクター。過去、出張で訪れたのをきっかけにタイ料理に開眼し、プライベートでも訪れるほどのタイラバー。
編集部 昨年の岡山での工場取材時に試作生地を見せていただいた”バナナデニム”が遂に完成したんですね! でも、バナナがデニムを救うかもしれないってどういうことですか!?
岸本さん バナナ、美味しいですよね。僕も好きでよく食べるんですが、それが実っていたバナナの木は、収穫された後どうなるか知っていますか? 一度果実を収穫されたバナナの木は、花も咲かなければ二度と実をつけることもありません。つまりバナナ農家にとっては役目を終えた用無し。毎年大量のバナナの木が伐採、焼却処分され、大気汚染や廃棄物処理問題の一因にもなっていたんです。そこで、僕らに何かできないかと考えていたところ、日本のとある工場がバナナの茎を繊維にできるということを知り、バナナを使ったデニム生地を作ってみようということになったんです。
編集部 出ましたね! とりあえずできることからやってみようの精神。それにしてもバナナの人生が一度きりだったなんて初めて知りました。で、実際作ってみて、バナナ繊維とデニムの相性はどうだったんですか?
岸本さん やってみてはじめて気がついたんですが、バナナ繊維はデニム作りには超~~不向きでした……(笑)。生地を織る製織工程において重要なのが糸のストレッチ性なんですが、バナナの繊維はそれがゼロ。だから少しでも無理な力が加わるとすぐに切れてしまうし、肌触りもソフトさはなく、麻なんかよりもはるかにザラザラ&ゴワゴワした感じなんです。


編集部 昨年、試作生地を見せていただいたときは、「こんなゴワゴワ&チクチクする素材をホントに穿けるの!?」とかなり半信半疑でした(笑)。
岸本さん そうなんです。いつも頼りにしている熟練の機屋さん「シンヤ」さんと何度も試行錯誤を重ね、コットン82%、バナナ18%という最適なバランスに辿り着きました。ちなみに、コットンは例のコートジボワールコットンです(コートジボワールコットンの記事はこちら)。が、バナナデニムはそこでゴールではなかった……。


編集部 やはり初めての試みは困難の連続なんですね。今後はどんな問題が起きたんですか?
岸本さん 混率や生地の表情はおそらくベストに近いところまで調整できたのですが、まだバナナ繊維の頑固なクセが残っており、穿くとチクチクと肌に当たるんですね。「これじゃあお客さんに出せない!」と、また試行錯誤の始まりです。様々な手法を試して行き着いたのが、高めの温度でウォッシュをかけた後に、シルク柔軟処理を施し、さらに高温で乾燥をかける加工。そうすることでチクチクとした肌触りと毛羽立ちが抑えられ、表面はまるでバナナのようなしっとり感を獲得したんです(笑)。
編集部 ついにバナナデニムが日の目を見たんですね! 実際、手に取ってみると本当にしっとりして、生地の風合いも豊か。そして軽いですね。
岸本さん 気づきました? 麻に近い特性を持つバナナ繊維を混紡したことによってコットン100%のデニムより軽量になり、通気性や吸湿性が高いのも特徴なんです。暑い時期でも穿きやすいと思います。それにバナナ独特の強めネップ感が、他のデニムにはない表情に貢献していて、120%満足のいく出来栄えになりました。
編集部 誰もやらなかった困難に挑戦したからこそ、生まれた唯一無二のデニムですね。これ、タイでも売れるんじゃないですか?
岸本さん ありがとうございます(笑)。今回のバナナデニムも、そもそもは少しでも環境保全のためになれば、という想いからでしたが、結果的にジャパンブルージーンズの可能性をさらに広げてくれるデニムになりました。
編集部 「バナナがデニムを救う」とはそういうことだったんですね。
岸本さん それもありますが、もう一つ。気候変動などが起これば、コットンの生産量も少なからず影響を受ける可能性があります。そうなる前に、天然素材でコットンの代替素材を模索しておきたいという想いもありました。バナナがその一つになると今回証明されたと思います。
編集部 バナナを見る目がちょっと変わりますね。お話、ありがとうございました!
ETHICAL PRODUCT Banana Denim


12.5oz Scrap Thailand Banana Tree Jeans(ワンウォッシュ)
コートジボワールコットンとバナナ繊維のハイブリッド素材を使った世界初のデニム。緩やかにテーパードさせた定番的ストレートシルエット。スクエア型のバックポケットは財布やハンカチなどの収まりがイイだけでなく、見た目のアクセントにも貢献している。コートジボワールの国旗からインスパイアされた、緑×白×オレンジのセルビッジ仕様。2万6000円。詳しくはこちら
12.5oz Scrap Thailand Banana Tree Jeans(加工)
同じくコートジボワールコットン×バナナ繊維によるデニム独特のネップ感を生かしながら、環境負荷の少ないオゾン加工によって自然な色落ち感を表現。チクチク感のない滑らかな生地感が洗いによって増幅され、年間を通して快適性も実現する。ワンウォッシュタイプ同様、背面のパッチにリサイクルデニムを採用している。3万円。詳しくはこちら
12.5oz Scrap Thailand Banana Tree Jacket
ワンウォッシュをかけたバナナデニムを、ラペル付きのカバーオールに。胸元にはサングラスなどを収納するのに便利な縦型ポケットを、両サイドにはスマホもスッポリ収まるポケットを備えた。背面裏側の縫い合わせとポケットのサイドにセルビッジが覗く。3万8000円。詳しくはこちら
問い合わせ先/ジャパンブルー
☎ 086-486-0002
https://www.denimlabo.com/c/japanbluejeans
※表示価格は税抜き
文/編集部