特集・連載
なるほどTHEジャパンクオリティ 匠のオシゴト見学【靴編】
通が欲しがるニッポンの傑作 「メイド・イン・ジャパン」といえば最"優"品質を保証する目印。家電、自動車、カメラ……世界が驚愕した名モデルは数あれど、日本人だからこそ、ビギンだからこそ提案できる通自慢な傑作があるんです! わかっている人こそ「スゴイーデスネ」と欲しくなりますよ!! この記事は特集・連載「通が欲しがるニッポンの傑作」#08です。
三陽山長の新レーベルとして話題の「YAMACHO MADE」。それもそのはず、ドレス顔にブ厚いソールを合わせた佇まいは今どき感満点で、何より履き心地がメチャ楽♡ その生産を担う奈良県の靴工場を突撃し、傑作“ドレスニ”誕生の秘密に迫りました!
「ソールに魂(soul)込めました(笑)」
―オリエンタルシューズ 取締役 営業部長代理 松本英智さん・談
私どもオリエンタルシューズがある奈良は、昔から靴産業が盛んな地。ただ近年は海外に押されて、どんどん衰退。そこで当社はOEMに活路を見出したんです。
もともとグッドイヤーからセメントまで幅広い製法を行い、靴種もドレスからスニーカーまで多岐に手掛けていましたから、いろんな注文をこなせる自負があったんですね。
おかげさまで現在ではいろんな有名ブランドのOEMを担当しており、今回は「YAMACHO MADE」の生産も任せていただけることに。じつはこういう“ドレスニ”作りのノウハウも当社はかなり蓄積していますので、腕が鳴る依頼でしたね。
通常スニーカーには用いない“シャンク”もしっかり仕込む
生産の難しかったところですか? やはりこのブ厚いフラットソールです。
コートシューズみたいにつま先から踵まで同じ高さなら簡単なのですが、ドレス靴的な品を保つためには踵のほうが少し上がったほうがいい。またつま先部分まで厚いと蹴り上げの際に引っかかりを感じるなど、歩行性能もスポイルされてしまいます。
だからこの靴では踵が高くなるよう本底と中底の間に“傾斜ヒール”という部材を仕込んだのですが、これがなかなか厄介で(笑)。
傾斜の始点と終点をどこにするかという設計上の難しさがあり、そうした緻密な計算に基づいた部材を寸分の狂いなく貼り合わせる作業上の難しさもある。そのどちらがダメでも靴がカタカタと不安定になってしまうため、設計を変更したり、作業工程を見直したりと、試行錯誤を繰り返しました。
試行錯誤の末に完成した設計図
もちろんソールの材質にもこだわっています。とにかく軽いソールをというオーダーでしたが、あまりそこばかり追求すると減りが早い。
そこで本底には、軽さはほどほどながら耐摩耗性の高いビブラム社の“モルフレックス”ソールを選択。その分、中底と傾斜ヒールにEVA(発泡樹脂)を採用し、依頼通りの“スニーカー並みの軽さ”をクリアできたんです。
軽さ、履き心地を担保するEVA素材
本底はビブラム社のモルフレックスソール
と、この靴のソールには当社の技術力と経験値が目一杯詰まっています。おそらくデザインや今らしいボリューム感に惹かれて購入される方が多いと思いますが、履いたらきっと皆さんの足が違いを感じ取ってくれるんじゃないかと期待しているんですよ(笑)。
作っていたのはコレ
YAMACHO MADE×Begin[ヤマチョウ・メイド×ビギン]
ダブルモンクストラップ
ドレスニ界の新星にいち早くビギンが別注を敢行。新作ダブルモンクをベースに表革×スエードのコンビとし、しかもその組み合わせは左右で逆! ちなみに普通のコンビも別注。3万6000円。(ビギンマーケット)







奈良県
オリエンタルシューズ
1947年に創立の老舗。グッドイヤー、マッケイ、ボロネーゼ、セメントと多彩な製法を手掛け、かつ量産も可能な国内屈指の実力派靴メーカーとして知られる。オリジナルブランドのほか、数多の有名ブランドのOEMも。
オリエンタルシューズ 取締役 営業部長代理
松本英智さん
1986年生まれ。大学卒業後、大手百貨店に勤務したのち2012年に同社へ。企画室を経て現職に就き、自社ブランド「オリエンタル」のディレクターも務める。休みの日に3歳と5歳の息子さんと遊ぶのが無上の喜びとか。
※表示価格は税抜き
[ビギン2020年5月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。