二度と作れない!? 札幌の冬に耐えうるモヒート×アーチのメルトンアウター
ここでは選りすぐりの“服飾博士”なデザイナーに、「これぞ10年選手」たるアウター自薦を依頼。ついついこだわって、作り込みすぎてしまった!?力こぶの数々を、手紙にしたためるかのように独白してもらいました! 今回はモヒートのデザイナー、山下裕文さんイチオシのアウターと制作秘話をご紹介。
MOJITO×ARCH[モヒート×アーチ]
ジョージズコート
ヘミングウェイの短編『雨の中の猫』の主人公ジョージへのオマージュから生まれたコート。札幌の名店、アーチの生地別注で一生モノ仕様に。14万8000円。(アーチ札幌)


デザイナー直筆メッセージ
モヒート デザイナー
山下裕文
1968年生まれ。熊本県出身。伝説のアメカジショップ・プロペラを経て2010年よりモヒートを開始。ヘミングウェイのライフスタイルを落とし込んだウェアを展開する。
これを作ろうと思った発端は、アーチのオーナー山内さんから「札幌の冬に耐えうるヘビーなメルトンアウターを」。とのお題を受けたからです。その期待に応えるべく、通称キロメルトンと呼ばれる、生地巾×1mあたりの重さが約1000gの超肉厚な生地を使いました。
ウールの名門である英・ムーン社のヘリテージコレクションから見つけた純粋にもの凄い生地なのですが、問題は売値が通常のジョージズコートの3倍近くになってしまうことでした。生地値はもちろんですが、縫製が非常にヘビーな作業となるからです(実際、作業中にミシンが一台壊れてしまったそうです)。
そもそもこのジョージズコートのデザインの元ネタは、アーチが古着として仕入れていたヴィンテージのコートなんです。それを入手されたアーチの顧客の方が僕にプレゼントしてくださり生まれました。
アーチは芯の通ったショップで、寒い場所にあるのにダウンアウターを扱いません。だからその姿勢にたがわぬアウターにすべく、売値には目をつぶり、究極の一着を追求することにしました。
裏地は伊のオルメテックスという綿ギャバ生地です。これも通常はアウターの表地になる生地で、袖の返しの部分や、エルボーパッチなど擦れる部分の耐久性を高めています。
今まで作ってきた服のなかではダントツの一番、間違いなく10年は余裕の一生モノです。もっとも、作れるのも今回限りかもしれませんけど(笑)。
※表示価格は税抜き
[ビギン2020年1月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。